教育・育児

ストリーミング制の廃止が決定/長所を伸ばし、誰もがあきらめずに学べる新制度へ

シンガポール
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初等学校卒業試験の結果で
進学・就職の進路まで決まるストリーミング制

シンガポールでは、小学6年生の児童にPSLE(Primary School Leaving Examination)と呼ばれる初等学校卒業試験の受験を義務付けている。そしてPSLEのスコアによって、中等学校で学ぶコースが決まる「ストリーミング制」を約40年間導入してきた。コースは「エクスプレス」「ノーマル・アカデミック」「ノーマル・テクニカル」の3つで、エクスプレスコースは4年間、各ノーマルコースは5年間、中等学校で学ぶ。コースによって、学ぶ科目も変わるため、その後の進学・就職の進路が小学校卒業時に決定するといっても過言ではない。
2019年3月、教育省(MOE)は2024年から4年間かけて段階的にストリーミング制を廃止することを決定した。今後中等学校では、「G1」「G2」「G3」という学力別プログラムを作成し、生徒は科目ごとに学力に応じて3種のプログラムを組み合わせ、学ぶことができるようになる。

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ストリーミング制の廃止により
新たな教育サービスが登場

シンガポールの平均学力は非常に高く、2015年の国際学力調査・PISAでも、読解力、数学的リテラシー、科学的リテラシーの3分野すべてで世界1位であった。建国わずか53年でこの結果を出せた要因にPSLEの効果があるのは明らかだが、近年この結果だけで長期的な進路が決まってしまうのはいかがなものかという声が高まってきた。
そこで教育省ではストリーミング制の廃止を決定。今後の初等教育に大きな影響を及ぼす改革であると国民は受け止めている。これまでエクスプレスコースに入るためには、すべての教科でまんべんなく高得点を獲得する必要があり、オールラウンダー重視の教育が求められてきたが、今後は得意な科目をより伸ばすニーズが高まりそうだ。
また、成績優秀者以外も学習するチャンスが増えることで、解けない問題の写真をアップロードすると、家庭教師や塾講師たちが無料で解き方を答えてくれるアプリ「ask.manytutors」のような学習進度の遅い子どもたちの勉強をサポートする学習アプリやウェブサイトのリリースが加速すると思われる。

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