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世代を超えた消費体験価値でリバイバルヒットに!韓国菓子市場の「ニュートロ」戦略

韓国
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韓国の菓子市場では、ノスタルジックで
新鮮さを感じる”ニュートロ”がトレンド

韓国の菓子市場において、親世代が子供時代に楽しんだ商品が、新たな価値を持ってZ世代に受け入れられる「リバイバル現象」が起きている。LOTTE WELLFOODから30年ぶりにリニューアル販売をされた「치토스 체스터쿵 (チートス いちご味)」は、今っぽいパステルカラーを使ったピンクを前面に押し出したパッケージでリニューアル。農心の「農心ラーメン」のように当時のパッケージのまま再登場するものもあり、各社が過去のブランド資産を活用した展開を加速させている。このトレンドはZ世代に「ニュートロ(New+Retro)」、すなわち新しい文化として受容されている点が大きい。


Z世代へのヒアリングでは「新商品だと思って買った」「親が懐かしむ姿を見て、昔の話を聞くのが面白い」といった声が聞かれ、世代を超えた体験に新鮮な価値を見出している様子が窺える。この動きは市場に大きなインパクトを与えており、再販された「農心ラーメン」は3か月で1,000万食を販売。さらに、日本の「きのこの山」に類似したロングセラー「チョコソンイ」は、1984年の発売以来、月平均売上が過去最高を記録するなど、既存商品の売上も押し上げている。

年代によって感じ方が異なる菓子が
世代間のコミュニケーションツールとして機能

食品業界がリバイバル戦略を採る背景には、景気低迷と消費者心理の変化がある。市場調査によれば、景気が不安定な時期ほど人々は過去を懐かしむ傾向が強まり、現実の厳しさから逃れたいという心理が「ヒーリング消費」へと繋がる。懐かしい味は、こうした消費者の感性に直接訴えかける強力なフックとなる。企業側にとって、この戦略はメリットが大きい。既存のブランド資産を活用するため、研究開発やマーケティングにかかるコストを最小限に抑制できる上、ノスタルジーを感じる中高年層と、それを新鮮なコンテンツとして捉えるZ世代という、幅広い層に同時にアプローチが可能である。Z世代は、これらの商品を単に食べるだけでなく、レトロなパッケージや親世代とのやり取りをSNS上で共有・発信しており、これがトレンドの拡散を後押ししている。親が子に商品を教え、共に消費することで、菓子が世代間のコミュニケーションツールとしての役割も果たしているのだ。1兆ウォン規模とされる巨大な菓子市場において、「ニュートロ」は一過性のブームに終わらず、長期的な成長を牽引する重要なキーワードとなる可能性を秘めている。