食・飲料

シンガポールZ世代の感性に響く体験消費/注目集める「ティーペアリング」

シンガポール
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ティーショップ「Tea Bone Zen Mind」
プラナカン文化とお茶を融合した体験を提供

シンガポールでは、ティーペアリングといった“体験型のティータイム”がZ世代を中心に支持を集めている。香りや温度、抽出時間、器といった細部にまでこだわるスタイルで季節の料理やスナックとお茶をペアリングする専門店をこの1~2年でよく目にするようになった。「シンガポール人はアルコールを好む人が他国より少ないです。お酒の味を楽しむことより、体調が不安定になったり翌日に響くことの方が気になるから。お茶をワイングラスで飲んだり、1杯のお茶を大事に味わうことが、自分の時間を豊かにしてくれるんです(24歳・金融)」と話すように、こうしたティータイムはZ世代にとって“新しいお茶体験”として受け入れられており、単にお茶を飲むのではなく、感性に響く時間として楽しまれているのが特徴だ。
注目されているのは、「Tea Bone Zen Mind」という老舗ティーショップで、看板もなく一見すると普通の民家に見えるが建物の中がそのまま店舗となっている。扉を開けると、外観とは対照的なモダンな空間が広がっており、そのギャップも話題となっている。人気の日本茶や、ライチウーロンや桃ウーロンなどのフルーツフレーバー、清涼感のあるレモングラスやジャスミンに、ドライフルーツや甘さを抑えたクッキーなどとペアリングして提供されている。同店で5月に開催したプラナカン文化に根付く伝統的なお茶とお菓子を楽しむ体験型ティーセッション「Nyonya Tea With Us(1時間、45ドル)」は完売になるほど大きな反響を呼んだ。

長蛇の列ができる高級ティーブランド
SNS映えするお茶体験を提供

ティーペアリングのトレンドの背景には、Z世代の価値観の変化がある。ティーペアリングという体験は、ただお茶を飲むのではなく、香りや空間、器の演出まで含めたティータイムで感性に響くような体験として重視している。「Tea Bone Zen Mind」のように、ノスタルジックな外観を活かしながら内部をモダンにリノベーションした空間という店舗スタイルも若者たちを惹き付けた。

また、Z世代に“茶文化の再定義”を与えるきっかけとなったのが、2024年8月2日にオーチャードゲートウェイにフラッグシップショップができた中国発の高級ティーブランド「CHAGEE」の存在だ。連日の長蛇の列や店のオリジナルトートバッグを持つ人も話題となっている。 「CHAGEE」の洗練された店舗はくつろげる空間を演出し、「Teapresso Machine」や「Tea on Tap」設備による本格的ティーバー体験を提供する。透明感のあるボトルに加え、キンモクセイやラン、クチナシなどの花の香りをブレンドしたお茶が、「お茶=古い」というイメージを刷新した。26歳のサロン勤務の若者は「お茶はお洒落。植物由来の香りにも癒される。体型を気にしているので、暑い日でもなるべく温かい飲み物を飲んで下半身を冷やさないようにしている」と話す。CHAGEEの一部の店舗では、2025年7月に「不思議の国のアリス」をテーマにしたポップアップストアを開催し、新しいアールグレイシリーズを発表、没入感やSNS映えする体験を提供したキャンペーンでも話題を呼んだ。