ストリーミング制の廃止が決定
多様化する教育
シンガポール教育省は1984年から小学3年生の知能が高い児童を選抜し、3年間GEP(Gifted Education Program)と呼ばれる英才教育プログラムを実施している。全体の約1%にあたる選抜された子どもたちは、特別プログラムを実施している小学校に転校し、英才教育を受け、名門中等学校へ進学する。最近では、GEP選抜をターゲットにした未就学児用の塾なども増加している。
また、小学生向けの新たな教育として注目を集めているのは、コーディング教室だ。教育省はコーディングプログラムを推奨しており、小学校の授業内でも段階的に開始した。一方で、従来の筆記試験による仕分けシステムは変更。2024年から4年間かけて段階的に、小学校卒業時点の点数で大学や就職の進路がほぼ確定する「ストリーミング制」を廃止することを決定した。今後中等学校では各教科ごとにG1、G2、G3という学力別プログラムを作成し、生徒は科目ごとの学力に応じてプログラムを組み合わせ、学ぶことができるようになる。
子どもの長所や個性を伸ばす教育へ
早期教育にも変化が
2015年の国際学力調査(PISA)でも、読解、数学、科学の3分野すべてで世界1位とシンガポールの平均学力は非常に高い。これまでは小学校卒業試験(PSLE)やGCE-Oレベルなど、全国統一試験の結果だけで進路を振り分けてきたが、AI時代の到来を受けて、教育省は読解力や想像力、人間的資質の向上を重視し、アクティブラーニングをより重視した教育への変換を決断。試験結果のみによるストリーミング制の廃止も決めた。全ての教科で高得点を目指すオールラウンダー教育が求められてきたが、今後は教育変革の影響もあり、得意な科目や長所をより伸ばすニーズが高まりそうだ。最近は特にコーディングや知能、アートを伸ばす才能教育が注目されており、子どもの個性を重視した早期教育ブームに拍車がかかると見られている。