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2017年アセアン・トレンドランキング ~ミャンマー編~

ミャンマー
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民政化により数年の間で目覚ましい経済発展を遂げているミャンマー。経済だけでなく、2020年に観光客数748万人という目標を掲げ、世界遺産や有名な遺跡だけでなく、雪山やビーチ、多民族による多彩な文化などを武器に外国人観光客も順調に増加しています。2017年はアウン・サン・スー・チー氏が指揮する国民民主連盟(NLD)政権が2年目に入り、海外からの投資や進出も着実に伸張するミャンマーのトレンドランキングをご覧ください。

 

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  ミャンマー発・渋滞をかいくぐる自転車フードデリバリー

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Yangon Door 2 Door」は、ミャンマー発のフードデリバリーサービス。2013年にサービスがスタートし、インターネットやスマホアプリで住所、注文商品、希望配達時間を入力すれば、100軒以上ある提携飲食店から料理をデリバリーできる。配達料無料などのプロモーションも積極的に展開。ヤンゴン中心部では、オートバイの乗り入れが禁止されている。自転車も道路ごとに規制があるが、道を選べば通行できるため配達はバイクではなく自転車で行われている。ミャンマー人だけでなく在住外国人もよく利用している。他にも「Food2u」など、後発のフードデリバリーサービスもあり、こちらはFacebookに宣伝を打ち、ミャンマー人向けに拡散しているためミャンマー人のユーザーが多い。現状、サービス内容や提携レストランはどのサービスも似ているため、今後いかに差別化を図るかが生き残りの鍵となりそうだ。

トレンドの背景

SIMカードの値下がりにより、携帯電話が一気に普及したことでインターネットやアプリの利用も当たり前になった。また、2011年に中古車の輸入規制が大幅に緩和され、急激に車が増えて渋滞が深刻な問題となった。日中のダウンタウンでは、1kmの移動に車で30分以上かかることもある。車で気軽に昼食に出かけることが難しいため、独自にデリバリーサービスを行う飲食店もあったが、多くが大口注文のみを対象にしていた。「Yangon Door 2 Door」などのサービスは、少量の注文にも対応して支持されている。渋滞の他に、半年間続く雨季の外出を嫌がる人もよく利用している。ヤンゴン市内における平均デリバリー費用は2,000~3,000チャット(約200~300円)。

 

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  FacebookやYouTubeを活用した外国語学習

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民主化により外資系企業や在住外国人の数が増加したこともあり、語学学校が人気となっている。最近では語学学校へ行く以外にも、インターネットやSNSを活用学習ツールも広がりを見せている。例えば「Natmauk center」は、語学学校の他にオンラインでの学習サービスを展開。20,000チャット(約2,000円)前後の月謝を払うと、PDFファイルやビデオが送られ、空いた時間を使い自宅学習ができる。講師への質問はFacebookや電話で行う。また、日本人YouTuberの「Htun Khaing」が教える日本語講座も人気である。10日に一度のペースでチャンネルが更新されており、主に日本の若者が使うスラングを説明する。マンガやアニメの影響で日本語や日本語のスラングを知る10代を中心にファンが多く、FacebookページのLike数は約12万。質問があればFacebookページを通してHtun Khaingに直接メッセージを送ることができる手軽さも人気の理由。

トレンドの背景

民主化に伴う外資系企業の増加により、これまで以上に国民にキャリアアップの意識が芽生えている。給料が高い仕事は、国内企業・外資系企業問わず、高い語学能力を必要とするところが多い。英語は高校の数学と科学の授業で使用されるため、第二言語のように扱える人も少なくない。英語以外の学習も人気で語学学校に通う人が増えているが、学校へ通う時間のない社会人でも自宅で学べるオンライン学習の人気は高い。さらに、オンラインでの生徒同士のコミュニケーションも楽しいと、生徒の定着率も高いという。また、英語が堪能な教師が少ない地方では高校を卒業しても英語を理解できない人も少なくないため、レベルの高い語学学習が受けられるオンライン学習は地方での広がりが期待できる。

 

  最新設備を導入した巨大複合施設「Junction City」

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2017年3月、ヤンゴン中心部に巨大複合施設「Junction City」が完成し、地元紙でも一面に取り上げられ大きな話題となった。施設にはショッピングモールの他、ホテルやオフィスビルが入る。シンガポールの不動産開発大手「Keppel Land」とミャンマー大手財閥「Shwe Taung Group」が共同で開発。飲食店は、「KFC」、シンガポール系中華レストランの「Crystal Jade」、ミャンマー麺料理店「YKKO」など、国内外の有名チェーン店が並ぶ他、日本の一風堂もミャンマー1号店を出店している。モールは最新の設備を導入しており、タッチパネルで店舗を検索するボードの他、トイレには清掃担当を評価するシステムがあり、清潔に保たれている。また、子ども用のキッズグラウンドや最新の投影システムを取り入れた映画館も入る。モールの客層は富裕層が中心だが、無料のイベントを週末のレジャーに足を運ぶファミリーも多い。

トレンドの背景

ヤンゴンではショッピングモールの建設ラッシュだ。2015年に完成した巨大複合施設「Myanmar Plaza」、2016年にはシャングリラホテルと直結するショッピングモール「Sule Square」、2017年には「CITY MALL」がオープン。民主化以降、GDPは過去5年が大きく成長し、所得の増加と消費意欲の向上でモールの需要は高い。海外メーカーの最新商品も国内で購入できるようになった。また、外国投資法が整備されつつあり、外資系企業が国内企業と組むジョイントベンチャーの大型プロジェクトも以前よりスピーディーに進められるようになり、続々とモールが建設されている。さらに、現在のミャンマーでは多くの人が新たな「娯楽」を求めている。軍事政権時代が長かったミャンマーでは、カップルやファミリーが行く場所といえば、映画館、湖、パゴダが定番だった。しかし、モールができたことで、ウィンドウショッピングやイベントなどが楽しめる新たな場所となっている。

 

 再評価される伝統スキンケア「タナカ」

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「タナカ」は熱帯地方に生える柑橘系の木の一種で、ミャンマー人はタナカの皮を水と一緒に石盤で磨り、液状にして頬に塗る。塗るとひんやりとし、体温を下げてくれる他、日焼け止め、肌の乾燥を防ぐ基礎化粧品的な効果もある。昔は男性も塗っていたが、現在では年配の女性や地方出身の女性が使用するイメージで、タナカに対して「田舎くさい」印象を持つ人もいる。一方で、大手コスメブランドの「L’Oreal」がFacebookでタナカの効能について投稿したり、タイのブランドがタナカ成分配合の化粧品、スキンケア製品を販売している。人気はタイのコスメブランド「Everyday Happy」のタナカ石鹸で、外国人向けのガイドブックにはお勧めの土産物として掲載されている。約100円と手頃な価格も人気の理由だ。

トレンドの背景

タナカはミャンマーでは昔から使われてきた伝統的な天然化粧品で、その歴史は古く、500年前に詠まれた詩にも登場している。海外文化に触れる機会の少なかった軍事政権時代は、年齢に関係なく、特に女性の間で使われてきたタナカだが、民主化が進んだことで海外のファッションやライフスタイルを取り入れたいと考える若者の間でタナカを使用しない人が増えている。しかし、タナカの効能は多くの人が認識しており、ミャンマーの大手コスメブランド「Bella」などからは、色のつかないタナカ石鹸やタナカパウダーも販売されている。これらのタナカ化粧品は、原木を磨る手間がかからず、簡単に使用できるため、忙しい女性の間では使用している人も少なくない。

 

 日本発のポップカルチャー「コスプレ」人口拡大

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ミャンマーでは近年、日本のアニメやマンガを中心にポップカルチャーが人気で、コスプレイベントも毎年規模が大きくなっている。2012年以降、毎年コスプレイベントが開催されており、2017年11月のコスプレイベントが第4回目となる。大使館主催の「Japan Expo」でもコスプレイベントを開催するなど、代表的な日本文化のひとつとして定着。コスプレイベントの主催者は企業やアニメ好きの学生の団体などさまざま。以前は、イベント運営の費用は企業や語学学校からのスポンサーフィーで賄っていたが、最近では参加者が増え、入場料(1人5,000チャット/約500円)で収益を得られるようになった。当初は数百人規模だったイベントも、現在では2,000人規模まで拡大。さらに、2017年には世界各国のコスプレーヤー代表が交流する「WCS(世界コスプレサミット)」にミャンマー人も初参加するなど、世界レベルのコスプレーヤーも出てきている。

トレンドの背景

以前からアニメやマンガ好きな人はいたものの、いわゆる「オタク」が増えたのは2011年に新政府が発足し、表現の自由が認められるようになってから。また、SIMカードも大幅に値下がりしたことでスマホが普及し、同時にSNSも一気に利用者が増えた。Facebookを通じて、共通の趣味を持った同志が集い、イベント会社ではない一般の学生によるアニメやマンガのイベントも増えてきた。娯楽の少ないミャンマーでは、アニメやマンガが若者にとって大きな楽しみのひとつであり、特に学生は夜に外出しないよう躾けられているため、家で楽しめるコンテンツは人気が高い。今までコスプレを知らなかった人もSNSでその文化に触れ、楽しむ人が増えている。


 

 

■スマホによって便利になっていく生活

2014年のSIMカードの値下がりにより携帯電話が一気に普及したミャンマーでは、スマホやSNSの利用者も拡大。1位の自転車フードデリバリーだけでなく、2位の外国語学習は民主化により外資系企業が増え必要性が増している語学力をスマホで学べる。さらにスマホでお経や高僧の説法を聴くなど、スマホは必要不可欠な存在となっている。

■民主化や法の整備で娯楽の種類が豊富に

民主化によりショッピングモールができたことで、それまで遊びに行く場所だった映画館、湖、パゴダ(仏塔)以外の選択肢が増えている。また、新政権になったことで表現の自由が認められるようになり、日本の文化に憧れを持つ若者がコスプレを楽しめるようになった点も注目すべき点であろう。

■海外情報の流入で女性の「美意識」に変化

SNSの普及により、欧米や韓国などの美容先進国から情報を入手しやすくなり、ミャンマー女性の美意識に変化が生じてきている。4位の伝統的スキンケアであるタナカの再評価だけでなく、美容家電やタイの美容エステの進出により、体毛が濃い女性が美しいとされていた美意識から、脱毛などにも関心が高まり、変化が生じている。

 

TNCアジアトレンドラボでは、こうした動きを2018年も引き続きウォッチしてまいります。他国のトレンドランキングの更新もどうぞお楽しみに。

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■調査概要調査方法:TNCアジアトレンドラボ、現地ボードメンバーを中心としたグループインタビュー、およびライフスタイル・リサーチャーによる定性調査

調査時期:2017年11月

調査対象者:ヤンゴンに5年以上居住する男女、かつアッパーミドル以上の生活者、10代後半~20代前半の、トレンドに敏感な層

調査実施機関:株式会社TNC(http://www.tenace.co.jp/)および海外協力会社


■株式会社TNC

各国の高感度層で構成される現地ボードメンバーと共にグループインタビューやリサーチを定期的に行い、ウェブサイトで情報発信や分析を行う『TNCアジアトレンドラボ』を2015年8月よりサービス開始。また70カ国100地域在住500人の日本人女性ネットワーク『ライフスタイル・リサーチャー』を主軸とした海外リサーチ、マーケティング、PR業務を行う会社です。現地に精通した日本人女性が、その国に長く暮らさないとわからない文化や、数字に潜む意味をひもとき、日本人が未だ知らない斬新なモノやコトを探すインバウンズ、日本企業が進出する際のベースとなるリサーチ・アウトバウンズや、現地の人たちの暮らしぶりや生活習慣のレポートから、海外におけるヒント探し、市場レポートなど幅広く対応します。また、レポートに基づいた視察のアテンドも行っております。


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株式会社TNC TNCアジアトレンドラボ編集部 木下・濱野

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