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2017年アセアン・トレンドランキング ~フィリピン編~

フィリピン
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2016年の経済成長率が6.8%とタイやシンガポールを上回る数値で、海外出稼ぎ労働者からの送金額は年間約310億ドルとGDPの10%以上にも上る、フィリピン経済。2年目を迎えるドゥテルテ政権はインフラの整備に多額の投資を行うことを発表し、経済政策の中核に据えました。英語が使える人が多く、外資系企業のコールセンターやサポートセンターも拠点を設置。海外情報も積極的に取り入れるフィリピンのトレンドランキングです。

 

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 需要が高まる空気清浄機

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2017年に入り、マニラの家電売場やスーパーマーケットで空気清浄機をよく見かけるようになった。価格帯はさまざまで、アメリカの「BIONAIRE」の製品は、4,500~6,500ペソ(約10,000~14,400円)前後。スウェーデンの「Blueair」の製品だと20,000~30,000ペソ(約45,000~67,000円)と高額だ。人気のメーカーはSHARPで、価格帯は6,745~13,495ペソ(約15,000円~30,000円)と、リーズナブル。SHARP製品は空気清浄だけでなく、喘息の原因になるダニやペットの産毛も取り除き、「蚊取空清」という薬剤を使わずに蚊を捕まえる機能も好評だ。デング熱やマラリアなどの蚊を媒介とした命に関わる病気の予防もできるため、特に小さな子どもがいる家庭で今後普及が進みそうだ。

トレンドの背景

数年前から、モールやスーパーマーケットの家庭用品売場で空気清浄機が販売されていたが、2017年には、大人の10人に1人が、子どもの10人に3人が喘息患者で、死亡原因にもなっていることや、デング熱に関する報道もあり、空気清浄機の需要が高まっている。また、外資系企業の増加に伴い、家族連れの外国人駐在員も増えている。駐在員が住むエリアであるボニファシオやマカティは、メトロマニラ中心部で交通渋滞による大気汚染が深刻で、駐在員向けの英字や日本語のフリーペーパーにも空気清浄機の広告が掲載されるようになってきている。

 

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 Instagramを活用したC to Cビジネス

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SNSを通じたC to Cビジネスが盛況だ。フィリピンで人気のSNSはFacebookとInstagram。特にInstagramが近年人気で、セルフィーやフォトジェニックな食べ物をアップするだけでなく、Instagramを活用したビジネスを始める若者が増えている。主に自分でデザインしたドレスやTシャツなどのオリジナル商品、海外のファッションブランドなどのアイテムなどを販売している。学生の間でもビジネスを始める人がおり、その多くは海外に住んでいる親戚に頼み、商品を輸入している。カナダの「HERSCHEL」やアメリカの「Little America」のバックパック、「COACH」の財布や、「MICHAEL KORS」の腕時計など人気のある海外ブランドを販売する人が多い。商品に関する質問などはSNSのメッセージで直接確認可能で、買い手は安心して利用できる。

トレンドの背景

フィリピンでは家族や親戚の誰かしらが海外へ出稼ぎ労働や移住していることが多い。そのため一時帰国する親戚に海外製品を購入してきてもらうことも比較的容易だ。商品の支払いは銀行経由で行い、発送は配車アプリ「Grab」のバイクタクシーや宅配便を利用する。SNS上でのビジネスは実店舗を構える必要がなく、すべてを自分の手で行うということでやりがいを感じる人が多い。また、フォロワー数が多い人気の出品者の中には、SNS上だけでなく、クリスマスに向けての商戦期の9月から12月にかけてバザーやフリーマーケットに出店することで、顧客との直接のコミュニケーションや新規顧客の獲得などの努力も怠らない。

 

 スモールバッチのこだわり「ソルティッド・エッグ・ポテトチップス」

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2017年、フリーマーケット発で注目されたフードが「ソルティッド・エッグ・ポテトチップス」である。ソルティッド・エッグ(アヒル卵の塩漬け)をペーストにしてポテトチップスにコーティングし、こってりと濃厚な味で厚みがあり、これまでにない食感で人気となった。「Saporito」、「Kettle Kitchen」、「DAC」など、10以上のショップから販売されており、オーガニックにこだわったものやカレーフレーバーなど、それぞれ個性的な商品を展開。150~200gで300ペソ(約660円)前後と一般的なポテトチップスと比較すると高額だが、スモールバッチでパッケージもお洒落なものが多く、2017年のクリスマスシーズンにはギフトとしても提案されている。

トレンドの背景

フィリピンではホームパーティーなど、家族や親戚で集まる機会が多く、さまざまな食事に加えて、ポテトチップスをはじめとするスナックもパーティーシーンには欠かせない。近年はマス商品だけでなくオーガニックのポテトチップスなどのこだわりのポテトチップスが充実してきている。ソルティッド・エッグ・ポテトチップスを販売するショップも素材やパッケージデザインにこだわっており、若者を中心に支持されている。また、ソルティッド・エッグのフレーバー自体も人気で、フィリピンのスナック「チッチャロン」(豚の皮をカリカリに揚げたもの)やソルティッドエッグの黄身をクリームに使用したクロワッサンやタルトも登場している。

 

 新たな交通網・首都圏と地方都市をつなぐ「P2P」

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2016年6月からメトロマニラ首都圏を中心に運行が始まった「Point-to-Pointバス」、通称「P2P」。2017年9月にはパンパンガ州クラーク国際空港への直行バスが、マニラ首都圏のNAIA3(マニラ国際空港ターミナル3)と、ケソン市の高級ショッピングモールの「TriNoma」から運行が開始された。その他、商業の中心地でありオフィス街のアヤラを中心に、マンダルヨン市、パラニアケ市、カビテ州サンタロサなど、フィリピン各地を結ぶ8路線が運航している。運行距離によって料金は異なるが、片道75~350ペソ(約165~770円)前後で利用可能。首都圏から約100㎞の距離にあるクラーク国際空港を利用する旅行者にも利用されている。

トレンドの背景

マニラ首都圏の人口は約2,300万人と一極集中の様相で、人口増加に伴い交通渋滞は深刻な社会問題になっている。マニラ首都圏の公共交通は、3路線が走るMRT(メトロマニラ首都鉄道)、バス、ジープニー(乗り合いバス)、乗り合いタクシーのみだった。トヨタの工場があるサンタ・ローザやクラーク国際空港にはタクシーもしくは、車で行くしかなかったがP2Pバスの運行開始でアクセスが向上した。他の公共機関に比べ料金は割高だが、確実に席が確保できること、途中停車しないため時間短縮になると利用者は多い。空港行き以外の路線はほとんどが通勤での利用だ。政府が提唱している南北への都市圏拡大計画で、北部のクラーク国際空港近辺もインフラを整備して、マニラ首都圏のハブ空港になる予定だ。「南北通勤鉄道」や「メガマニラ圏地下鉄」などの計画があり、首都圏と地方都市のアクセス向上と渋滞緩和が見込まれる。

 

 ギフトカード&結婚式招待状のDIY

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マニラのトレンド発信地、ボニファシオのセレンドラに、アート系の書籍が並び、コーヒーを飲みながらくつろげるアートスペース「Art Bar」がオープン。店内ではレタリング教室も実施されている。また、ショッピングモール「Greenbelt」や「SM Block」 にはアートに特化した書籍や文具、ワークショップも実施するショップ「The Craft Central」がオープンした。 店内には日本製の筆ペンや水彩絵の具などが並び、筆ペンやペン先を使って。オリジナルの結婚式の招待状やカードを作成することが人気だ。ワークショップではレタリング、ペーパーカッティング、ラインストーンアートなどを学ぶことができる。

トレンドの背景

フィリピンでは誕生日やクリスマスなど、プレゼントをする際にはギフトカードを添えて渡すことが一般的。また、結婚式の招待状へのこだわりは一際強く、有名な後見人が多ければ多いほど上等な紙を使用した立派な招待状を用意しなければならない。近年では他人とは違うオリジナリティを求める若者が増え、カードや招待状も自分でつくりたいと考える人も少なくない。そのため、アート系のショップが数を増やし、ショップ主催のワークショップも盛況となっている。


 

 

■家族や親戚、友人との強い結びつき

2位のInstagramを活用したビジネスは海外に出稼ぎに出る人が多いこと、さらに家族や親戚のつながりが強いため、海外在住の親族に海外製品を購入してもらい、それをSNSで販売するビジネスが盛り上がりを見せている。3位のソルティッド・エッグ・ポテトチップスはパーティーシーンやギフトとしても人気に。5位のギフトカード&結婚式招待状のDIYも同じくギフトやイベント事といった具合に、家族や親戚、友人との結びつきが強いフィリピンならではの背景を感じる。

■渋滞・大気汚染を解消するための製品&交通機関

東南アジアでは各国共通して、都市部の渋滞と渋滞に伴う大気汚染も社会問題になっている。フィリピンでは大気汚染やデング熱などを警戒して、空気清浄機の需要が高まっている。また、4位のP2Pの運行開始は公共交通機関を充実させることで、渋滞緩和と大気汚染の解消を狙ったものと考えられる。現政権の経済政策の中核にもインフラの整備を掲げており、今後実施の政策も注視したい。

地方都市の発展

上記にも付随するが、インフラの整備によりマニラ首都圏と地方都市やこれまでアクセスが悪かったクラーク国際空港とのアクセスが容易になった。また、南北への都市圏拡大計画で、クラーク国際空港周辺もインフラを整備して、マニラ首都圏のハブ空港になる予定。近年は空港周辺に外国人駐在員も多く住むようになり、大きなモールもでき、地方都市の雇用創出にもつながりそうだ。

 

TNCアジアトレンドラボでは、こうした動きを2018年も引き続きウォッチしてまいります。他国のトレンドランキングの更新もどうぞお楽しみに。

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■調査概要調査方法:TNCアジアトレンドラボ、現地ボードメンバーを中心としたグループインタビュー、およびライフスタイル・リサーチャーによる定性調査

調査時期:2017年11月

調査対象者:マニラに5年以上居住する男女、かつアッパーミドル以上の生活者、10代後半~20代前半の、トレンドに敏感な層

調査実施機関:株式会社TNC(http://www.tenace.co.jp/)および海外協力会社


■株式会社TNC

各国の高感度層で構成される現地ボードメンバーと共にグループインタビューやリサーチを定期的に行い、ウェブサイトで情報発信や分析を行う『TNCアジアトレンドラボ』を2015年8月よりサービス開始。また70カ国100地域在住500人の日本人女性ネットワーク『ライフスタイル・リサーチャー』を主軸とした海外リサーチ、マーケティング、PR業務を行う会社です。現地に精通した日本人女性が、その国に長く暮らさないとわからない文化や、数字に潜む意味をひもとき、日本人が未だ知らない斬新なモノやコトを探すインバウンズ、日本企業が進出する際のベースとなるリサーチ・アウトバウンズや、現地の人たちの暮らしぶりや生活習慣のレポートから、海外におけるヒント探し、市場レポートなど幅広く対応します。また、レポートに基づいた視察のアテンドも行っております。


■問い合わせ先

株式会社TNC TNCアジアトレンドラボ編集部 木下・濱野

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