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2018年アジア・トレンドランキング ~シンガポール編~

シンガポール
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6月に史上初となる、アメリカ合衆国のドナルド・トランプ大統領と朝鮮民主主義人民共和国の金正恩国務委員長の首脳会談の舞台となったシンガポール。また、9月には金融商品及び国・政府関連の格付け会社フィッチ・レーティングスが、シンガポールの格付けを「AAA」に据え置き、見通しを「安定的」と発表。国内外の技術を集めた都市開発も進み、スマートシティ実現最速国としての呼び声高いシンガポールのトレンドランキングです。

 

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 異例のハリウッド映画『クレイジー・リッチ』が大ヒット

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シンガポールが舞台となったハリウッド映画『クレイジー・リッチ』がアメリカをはじめ世界で大ヒットした。これまでのハリウッド映画としては異例となる出演俳優はもちろんのこと、監督、原作者、エキストラと、ほとんどのスタッフがアジア系で制作された。
原作はシンガポール人作家のケビン・クワン氏が2013年に発表し、世界中でベストセラーとなった小説『Crazy Rich Asians』。8月15日に全米で公開されて以降、3週連続で週末興行収入1位に輝き、全世界での興行収入も250億円を突破した。日本でも9月末から公開されロングラン上映された。すでにハリウッドでは続編の企画も進行中だ。

トレンドの背景

シンガポール政府観光局と映画委員会の全面的なバックアップの下、ほとんどの撮影をシンガポールで敢行。マリーナ・ベイ・サンズやマーライオン公園など、人気観光スポットが目まぐるしく登場することから、インバウンドの追い風にもなっている。全米で大ヒットしたことにより、シンガポールでもさらに注目が集まった。原作本も引き続きヒットしており、日系書店の紀伊國屋書店では、クワン氏特設コーナーを設置した。
一方、世界的なビデオブロガーのNasが作成した、「アジア人がクレイジー・リッチというのは典型的なステレオタイプだ」という内容の動画「CRAZY POOR ASIANS.」がFacebookで拡散。2週間で再生回数が430万回を突破し大きな反響を呼んだ。また、映画のヒットの裏には、ハリウッド映画では設定がアジア人でも、白人俳優が起用されることが多く、ハリウッドに多様性を求める声が高まっていたことも大きく影響している。

 

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 開発が進む北東部・プンゴル地区

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シンガポール政府は機能的な新しい街づくりを目指し、1996年に北東部のプンゴル地区の開発計画「Punggol 21」を発表するも、通貨危機や経済危機の影響から10年ほど開発が進んでいなかった。2007年に「Punggol 21+」を発表し、公団住宅の追加建設がスタート。完成時の住戸数は96,000戸となる。
コンドミニアムや大型商業施設の建設も活発で、2016年オープンの総床面積50,000㎡を誇るプンゴル駅直結のショッピングモール「Waterway Point」には、週末になると周辺で暮らす家族連れが訪れ、駐車場には長い列ができる。その他、生活をサポートする機能が充実し、子育て世代をターゲットにした新しい街づくりが進んでいる。

トレンドの背景

このエリアの新交通システム「LRTプンゴル線」は、三菱重工が開発した海外都市交通向けゴムタイヤ式全自動運転車両の初号プロジェクト。また、「Waterway Point」は積水ハウスなど3社によって造られたショッピングモール。このように日系企業がプンゴル地区の開発に大いに関わり、貢献を果たしている。
駅を中心に、交通網、住宅、公園、学校、保育園などが整備されている他、シニア向けの健康器具が設置された屋外施設「高齢者向けフィットネス・ステーション(Elderly Fitness Station)」や宗教に配慮した施設なども配置され、ソーシャルミックスな都市づくりも実施している。さらに北部のプンゴル・ノース地区に、デジタル産業ハブ「Punggol Digital District」の建設が決定し、シンガポールのミニシリコンバレーを目指すとしている。

 

 植物工場&スマート家庭菜園で食料自給率向上へ

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食料自給率1割未満と言われているシンガポール。これまで食料供給の大半を海外からの輸入に依存してきたが、外国への過度な食料依存に対する危機感が高まっている。2017年、政府による新規農業振興政策が発表され、都市型ハイテク農業の動きが加速。太陽光利用型や完全人工光型の植物工場で栽培された野菜が、スーパーマーケットへ出荷されている。中国産と比べ価格は1.5倍以上と高価だが、シンガポール産野菜のセールスは好調。
また、卓上用からベランダ用まで様々なスマート家庭菜園が登場しトレンドとなっている。代表的なメーカーとしては「Plantui Singapore」や「Crick and Grow」などがあり、価格は299SGD(約24,600円)や398SGD(約32,900円)など。

トレンドの背景

東京都23区ほどの狭い国土に約561万人の人口を抱えるシンガポール。土地はすべて国有地で、20年の賃借契約による使用が主となる農地の面積は狭小である。しかし近年、異常気象や原油価格の上昇、人口増加などによる世界的な食料自給率の低下を受け、政府は「アグロテクノロジー・パーク」構想を発表。外資誘致や農場の規模拡大、集約化はもちろんのこと、農業生産性基金を設立し、ハイテク農業に取り組む企業や投資家に対し、コストの3割を負担している。
狭い土地を有効活用する垂直農業や水耕栽培など、技術革新が進んでいる。また、この流れを受けて、国民の多くがHDBという公団住宅で生活しているシンガポールでは、スマート家庭菜園の利用者が急増している。

 

 デッドスペースを有効活用する斬新アミューズメント

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高額景品が並ぶクレーンゲームが若者を中心に人気を集めている。景品はNikeやadidasといった有名スポーツブランドのプレミアスニーカーやiPhoneなど。また、1〜2名用の極小カラオケボックスも急増しており、ショッピングセンターの通路やエスカレーター脇といったデッドスペースに設置されている。
さらに斬新なデッドスペース活用法として注目されているのが、空中プレイグラウンド「Airzone」。リトルインディア地区にある大型商業施設「City Square Mall」内の中央の吹き抜け部分にセーフティネットを設置した世界初の空中プレイグラウンドだ。まるで宇宙遊泳をしているかのような気分で遊ぶことができると大盛況。週末は順番待ちの長い列ができる人気施設となっている。

トレンドの背景

近年MRTの路線が整備され拡大したことにより、駅直結型の大型商業施設が多く建設されている。その一方で、各ショッピングセンターのテナントは、どの商業施設も似たり寄ったりで、個性に欠けているのが現状だ。その結果、建設当初の予想ほど客足が伸びず、空き店舗が目立つところも少なくない。そこで手っ取り早く空きスペースを活用したり、床面積の小さな商業施設では、デッドスペース利用で賃料を稼いだりしている。また、新しい設備を設置することで話題となり、それが集客につながることから様々な新アミューズメント設備や施設が続々と誕生している。

 

 世界的カリスマビデオブロガー・Nasの影響力

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ハーバード大学を卒業後、ニューヨークのIT企業でエンジニアの仕事をしていたイスラエル出身のNasことNuseir Yassin氏。順風満帆な人生だったある日、ハイステータスだけでは人生を真に楽しめないと自覚し退職。2016年に、毎日1分間の動画で自国や旅で出会った人やスポットを紹介する「Nas Daily」を立ち上げた。
クオリティの高い映像、わかりやすい内容、適度な長さ、毎日更新される目新しさ、そしてNas自身の魅力もあり、瞬く間に世界的なカリスマビデオブロガーに。2018年12月現在、Facebookのフォロワーは約1,000万人。シンガポールでも若者やSNSユーザーなら誰でも知るほどの知名度を誇る。8月に来星した際には10本の動画がアップされた。さらにリー・シェンロン首相自らビデオに出演し注目を集めた。

トレンドの背景

シンガポールのみならず世界中で絶大な人気を誇るNas。彼の発信力、カリスマ性にあやかろうと、リー・シェンロン首相自らがNasの動画に出演し、シンガポールをアピールし、国内外から大きな反響があった。さらに首相だけでなく、ビビアン・バラクリシュナン外務大臣もNas作成のシンガポール関連動画を自身のFacebookでシェアし、政府のFacebookページで紹介するなど政治にも活用している。Nasの来星は、政治に関心が薄い若者に、多額の資金を使わず政府の存在感をアピールする千載一遇のチャンスと捉えたようだ。

 


■米映画史に革新を起こした『クレイジー・リッチ』

シンガーのジャスティン・ビーバーや多くのセレブから「みんな観て!」と絶賛された、シンガポールが舞台のハリウッド映画『クレイジー・リッチ』。 これまでにないキャスト全員がアジア系というハリウッド映画が、全米公開初週から3週連続1位の快進撃をみせた。 「この夏、ハリウッドを最も湧かせたのは、最も意外な映画だった」と評論家たちも称賛の声を上げた。シンガポール政府観光局と映画委員会の全面的なバックアップを受け、撮影の多くはシンガポールで行われた。映画の反響は大きく、続編の企画も進んでいる。アメリカの特に都市部ではダイバーシティが深化し、アフリカ系、ヒスパニック、アジア系などの存在感も大きくなったことも同作のヒットの背景として考えられる。

■都市型ハイテク農業が加速

食料自給率1割未満のシンガポールでは、これまで食料供給の大半を海外からの輸入に依存してきた。近年のフードセキュリティへの意識の高まりを受け、政府は農業生産性基金を設立し、ハイテク農業に取り組む企業や投資家に対しコストの3割を負担している。太陽光利用型や完全人工光型の植物工場で栽培された野菜が、スーパーマーケットへ出荷され、シンガポール産野菜のセールスは好調。農業のハイテク化はまだ始まったばかりではあるが、今後の展開に注目していきたい。

TNCアジアトレンドラボでは、
こうした動きを2019年も引き続きウォッチしてまいります。
トレンドランキングの総括もどうぞお楽しみに。
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■調査概要調査方法:TNCアジアトレンドラボ、現地ボードメンバーを中心としたグループインタビュー、およびライフスタイル・リサーチャーによる定性調査

調査時期:2018年10~12月

調査対象者:シンガポールに5年以上居住する男女、かつアッパーミドル以上の生活者、10代後半~20代前半の、トレンドに敏感な層

調査実施機関:株式会社TNC(http://www.tenace.co.jp/)および海外協力会社


■株式会社TNC

各国の高感度層で構成される現地ボードメンバーと共にグループインタビューやリサーチを定期的に行い、ウェブサイトで情報発信や分析を行う『TNCアジアトレンドラボ』を2015年8月よりサービス開始。また70カ国100地域在住600人の日本人女性ネットワーク『ライフスタイル・リサーチャー』を主軸とした海外リサーチ、マーケティング、PR業務を行う会社です。現地に精通した日本人女性が、その国に長く暮らさないとわからない文化や、数字に潜む意味をひもとき、日本人が未だ知らない斬新なモノやコトを探すインバウンズ、日本企業が進出する際のベースとなるリサーチ・アウトバウンズや、現地の人たちの暮らしぶりや生活習慣のレポートから、海外におけるヒント探し、市場レポートなど幅広く対応します。また、レポートに基づいた視察のアテンドも行っております。


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株式会社TNC TNCアジアトレンドラボ編集部 濱野・木下

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