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インドのアニメファンが6万人来場!第2回「Mela! Mela! Anime Japan!!」特別レポート【後編】 | TNCアジアトレンドラボ

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インドのアニメファンが6万人来場!第2回「Mela! Mela! Anime Japan!!」特別レポート【後編】

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2025年9月13日(土)と14日(日)に、インド政府公認の日本アニメのイベント『Mela! Mela! Anime Japan!!』が、デリーの「Pacific Mall Tagore Garden」で開催されました。前編に続き、デリー在住のライフスタイル・リサーチャーがイベントの様子をレポートします。

後編のレポートでは、日本の食やイベントの参加者の声にフォーカスを当ててお届けします。

前編はこちらから:https://tnc-trend.jp/india55/

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イベントの様子は、「日経エンタテインメント!Web」でも、別の内容でレポートしております。こちらもぜひご覧ください。

『JAPANエンタメ 世界進出分析 第6回』:https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/18/01167/00006/

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会場には飲食を扱う店舗も数店舗出展していた。前回はしっかりとした食事メニューが多かったが、今回はパンやおむすびのような軽食が中心で、今トレンドの抹茶ドリンクも提供されていた。

インドでは宗教的な理由でベジタリアンが多く、食への慎重さがうかがえる。「興味はあるが、何が入っているか不安」という来場者の声も昨年同様に多く聞かれた。

インド初の日本パン専門店の「Iroha」は、普段から駐在日本人に親しまれている人気のベーカリーだ。今回のブースでは、アップルパイやクリームパンなどの菓子パンのほか、カレーパンといった惣菜パンも販売していた。メロンパンと焼きそばパンは、夕方4時ごろにはすでに完売していた。アニメのシーンに登場するパンを実際に食べてみたいというニーズが高かったのだろう。

おむすび専門の「MUSUBI」も、17時ごろに追加で商品を搬入するほどの売れ行きだった。「ツナマヨください」と1つのおむすびを購入し、数人でシェアしながら味見する若者や、具材についてスタッフに尋ねる来場者の姿も見られた。

世界的にも注目を集めている「おにぎり」をインドで展開する「MUSUBI」は、デリーで開業してまだ3か月ほど。今回のような日本文化を紹介するイベントには積極的に出店しているという。「あなたのお店、知ってるよ!」「アニメで見て、おにぎり食べてみたかった!」という声をかけられたと、スタッフは笑顔で語った。

「インドは食への壁が高いが、おにぎりは具材の工夫で対応できるため、現地の人にも受け入れてもらいやすい。この機会に広く知ってもらいたい」と意欲を語った。Zomato(インドのフードデリバリー)では、ツナマヨやスパイシーマヨが人気だが、今回のイベントでは見た目も豪華な天むすが最も売れたという。
次回の出展について尋ねたところ、「イベント内のワークショップを活用し、体験を通じておむすびの魅力を伝える企画を行いたい」と、今後への意欲を語ってくれた。

学校の教員であり、ジャパンファンデーションでも日本語を教えているリシャーブさんは、映画館で学生たちをまとめていた。

昨年はジャパンファンデーションのブースで浴衣体験のサポートを行っていたが、今年はアニメを通じて日本文化や、出展している日本企業について学生たちに調査をさせ、授業で発表させる目的で来場したという。

今年は映画上映が充実していたほか、企業ブースや体験型のゲーム、アクティビティも増えており、学生たちにとって新しい学びと体験の場になったようだ。リシャーブさん自身も「とても良い経験になった」と、先生・生徒ともに満足そうな様子だった。

「インドの子どもたちはアニメを通じて日本に興味を持ち始め、日本語を選択する学生が増えています。私の生徒の中には、すでに日本語能力試験の4級や5級に合格した子もいます」と話す。

インドの学校では、小学5~6年生から第三言語の授業が始まり、サンスクリット語やフランス語、スペイン語、ドイツ語、中国語、日本語などから選択できる。かつて日本語は「難しい」と敬遠されがちだったが、アニメの影響により選択者が増えてきているという。

今後の展望を尋ねると、「日本の学校や日本人との交流機会をもっと増やしたい。そして将来的には、生徒たちに日本留学や日系企業への就職にも挑戦してほしい。そのためには、もっと政府や日系企業からのサポートが必要です」と、リシャーブさんは熱意を込めて語ってくれた。

昨年に続き、今年も多くのインド人アニメファンにインタビューをしていて気がついたことがある。

今年は、ただ単に「アニメが好き」というだけでなく、アニメを通じて「自分がしたいこと」が明確で、実際に行動に移しているファンが多いと感じた。

ムンバイから来たアニメファンのイプシットさん(写真左)は、実際にアニメ声優として活動している。2010年からアニメを観ており、特に『進撃の巨人』に大きな影響を受け、声優になりたいと強く思うようになったという。2〜3年前からCrunchyrollで声優として活動しているそうだ。

「今日の開催が本当に待ち遠しかった。毎日インスタや公式サイトをチェックしていたよ」と話す。両親や近所の人には「アニメのためにデリーへ行くの?」と非難されたそうだが、「そんな声は気にしない」と笑顔で語った。

一方、医師のアビディープさん(写真右)はチェンナイから念願の来場を果たした。昨年も来たかったが、担当していた重体患者がいたため断念したという。アニメとの出会いは「Animax」で観た『カードキャプターさくら』。そこから本格的なアニメファンになった。今回の最大の目的は、敬愛する声優・茅原実里さんのショーだという。

遠くからイベントのために来たふたりに、今後のアニメの存在について尋ねてみた。

「インドにおける日本アニメの知名度は非常に高い。アニメを入り口に、他の日本のエンターテインメントにも関心が広がっていくと思う。イプシットのように“アニメ好きを形にする”人も増えているし、僕らのように、アニメファン同士のつながりもどんどん強くなってきている」と語ってくれた。

日本語話者のニキルさん(写真右から2人目)は、インドのアニメファンとアニメ関係者・企業をつなぐ会社「AniSync」を設立した。

インドではアニメ人気が確実に広がっており、これまでのように「観るだけ」ではなく、ファン同士の交流やイベントの開催などを通じて、アニメの「世界観を体験する」層が増えている。インド全国には多くのファンクラブが存在しており、イベントやファンミーティングを行いたいという声は多いが、活動はまだ小規模にとどまっている。そのため、そうしたファンとアニメ関係者をつなぐことの重要性を感じ、起業に至ったという。

AniSyncではこれまでもアニメイベントを開催してきたが、モールなどの大規模な場所での開催は想定していなかった。しかし、昨年の『Mela! Mela! Anime Japan!!』の成功を機に、モール開催のアイデアを得て、現在は6都市でイベントを実施。特に昨年12月にチェンナイのモールで行ったイベントでは、大きな成果を上げることができたという。今年も引き続き、ムンバイ、プネー、インドール、バンガロール、チェンナイの5都市で開催を予定している。 今年は日本からのアニメ関係者の参加が増えていることに喜びを感じており、「日本からもっとアニメ関係者が来てくれることが必要だ。特にクリエイティブ関係者は、多くのファンが直接会うことを望んでいる。そうした交流は、インドにおけるアニメコミュニティの拡大や、作品の質の向上にもつながるのではないか」と語った。

アニメ制作への関心について尋ねると、「もちろんある」と即答した。「インドでも日本のように美しいアニメを制作するには、まずその素晴らしさを多くの人に知ってもらうことが必要だ。私たちはアニメファンだけでなく、より多くのインド人に日本のアニメの魅力を届けたい。そして広めることが、私たちの使命だと思っている」と、熱意を込めて語ってくれた。

また、まだまだ暑い9月デリーだが、会場では野外にも関わらずコスプレイヤーも大勢集まっていた。

漫画とアニメが好きな16歳のスナンドニーさんは、出展していたパン屋「Iroha」のふわふわしたパンを気に入っていた。

自身のインスタのQRコードと共に登場したシダーント君(19歳)は、コスプレ仲間やアニメ仲間をもっと増やしたいと語っていた。

アルマーン君(16歳)は、TVアニメ『僕のヒーローアカデミア』のキャラクター「死柄木弔」のコスプレ。手の部分は青いゴム手袋にティッシュペーパーを詰め、両面テープで体中に貼り付けており、手作りながらも凝った仕上がりとなっていた。彼は「日本のすべてが好き。アニメや漫画はもちろん、日本人も日本食も日本のカルチャーも全部好きだ」と語り、日本語での受け答えにも挑戦していた。将来は日本で学び、アニメやアート、デザイン系の仕事に就きたいという。

プロフェッショナル・コスプレイヤーのガルギーさん(23歳)は、普段は仕事をしながらコスプレ活動にも力を入れている。数か月前にプネーからデリーへ戻り、今回が初めての参加だった。アニメやエンタメ系のブースだけでなく、日本の大学ブースやTOYOTAなどの大企業のブースにも満足していた様子だった。「日本の、特に田舎に興味がある。いつか訪れてみたい」と話し、アニメのほかにも日本食や日本文化、J-POPにも関心があるという。現在、日本語を勉強中で、茶道やいけばなにも興味があり、もっと日本文化について学びたいと語っていた。「本格的な日本文化を体験できる場所がまだ少ないので、このイベントでも茶道やいけばななどのワークショップを設けてほしい」との希望も述べていた。

コスプレイヤーに共通していたのは、「コスプレ専用のグッズがもっと欲しい」「参加の機会をもっと増やしたい」といった声だった。昨年に比べると本格的なコスチュームを用意している来場者も増えており、より多くのキャラクターのコスプレに挑戦したいという意欲も感じられた。

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今年のファンは、彼らのように「アニメ好き」の思いを形にし、自分たちでイベントを開催したり、ファンクラブの活動を活発にするなど、一つのコミュニティとして広がっていることがわかる。また、趣味や関心にとどまらず、アニメを本格的に職業にする人も増えており、生活の中で重要な位置を占める存在となっている。つまり、「日本のアニメ」という強い存在がインドでの入口となり、そこから日本の技術や文化、伝統などが多方向に広がる可能性を感じさせる。そして、それを待ち望んでいるインドの人々が多く存在することに、あらためて気づかされたイベントだった。