2024年9月オープンの複合施設「New Bahru」
体験できる空間として若者から支持される
2024年9月、自然豊かで文化的なFort Canning駅周辺に誕生した、複合施設「New Bahru(ニューバル)」がZ世代たちの新たなトレンドスポットになっている。従来のショッピングモールとは一線を画し、植物を巧みに取り入れた空間が特徴的だ。ショッピングモール内には、40以上のメイド・イン・シンガポールのブランドが集結するほかレストランやカフェ、スパやジム、家具付き賃貸住宅までを網羅し、“見る・買う・飲む・感じる”すべてがここ1ヶ所で完結する。単なる消費の場ではなく「体験型の空間」「表現する場所」であることが、若者たちから圧倒的な支持を集めている。
施設内で開催されるワークショップでは、刺繍やアロマ、スキンケア製品づくりといった手を動かすクラフト体験が豊富で、消費者ではなく参加者として過ごせるのが「New Bahru」ならではの特徴となっている。また、植物性ミルクブランド「OATSIDE」が設置した巨大滑り台や毎月替わるユニークなポップアップストアなど、遊びながらブランドの世界観に触れられる遊び心あふれるプロモーションも人気を集めている。
美大生のChloe(19歳)は「ここに来ると、自分の感性が刺激される。モールって普通は”買うだけ”の場所だけど、「New Bahru」は”表現する場所”って感じ」と感じており、この施設の独特な魅力が若者に刺激を与えている。従来の商業施設の枠を超えた「体験」と「共感」を提供する場所として、シンガポールの若者文化に新たな潮流を生み出している。
シンガポールのZ世代の価値観にマッチ
ワークショップやイベントも盛んに開催
マレー語で「新しい」を意味する「Bahru」と英語の「New」を合わせたNew Bahruの施設名には、シンガポールの街に「新しさ」を吹き込むトレンドスポットとしての願いがこめられている。革新的な飲食・宿泊施設を展開し多数の受賞歴を持つシンガポールのホスピタリティ企業「The Lo & Behold Group」がコンセプトとキュレーションを手がけ、Nan Chiau High Schoolの旧校舎をリノベーションした施設は、レトロな校舎の雰囲気とモダンなテナントが融合する場所へと生まれ変わった。
「New Bahru」が注目される背景には、シンガポールのZ世代が重視する価値観の変化がある。彼らは「サステナブル」「体験重視」「ノスタルジー再解釈」という価値観を大事にしており、消費行動も単なる物質的なものではなく「意味のあるもの」「ストーリー性のあるもの」にシフトしている。「New Bahru」の最大の魅力は、まさにこの”文化的な共感”を提供している点にある。
2020年にオンラインショップをオープンしたボタニカルショップの「soilboy」は、コロナ禍で自宅のインテリアや観葉植物への需要が高まる中で売り上げを伸ばし、「New Bahru」へ体験型ボタニカルデザインスタジオ兼ショップとして出店しZ世代の人気店となっている。週末にはおしゃれな若者たちが集まり、フォトシューティングを楽しむ姿も見られ、ワークショップやイベントも盛んに開催されている。文系大学生のLi Xuan(22歳)が「人と会わなくても、アート作品や雑貨から”誰かの思い”が伝わってくる。今の時代の”つながり方”だと思う」と表現するように、「New Bahru」は物理的な空間を超えて、Z世代にとって新しいコミュニケーションの場としても機能している。





