オフライン店舗での販売に注力
香りの体験を重視した空間を演出
2019年に新型コロナウィルスが発見されてからゼロコロナ政策が終了する2022年に至るまで、中国の全体的な美容業界が落ち込む中、堅調に業績を伸ばし続けたフレグランスブランド「观夏to summer」が注目されている。2018年に北京で創業され、上海・深圳・杭州でも展開しており、植物・茶といった天然の香りを“中国らしい香り”と定義し、香水・アロマ・ルームフレグランス・ボディウォッシュ・ハンドクリーム等の商品販売を行っている。「观夏to summer」は“目で観て 香りを通して 現代のオリエンタルな美を感じてもらう”をコンセプトにし、オフライン店舗での販売に力を入れている。入店時、必ず製品で手を洗ってもらうところから香りの体験が始まり、その後店内を進むと洗練されたシンプルなデザインのパッケージに「桂」「昆」「柚」「蘭」「薔」「茉」「莫」等の漢字一文字で香りが表現された商品が目に飛び込んでくる。店内は3割が製品販売スペースで、残りの7割は空間設計されている。商品をイメージしたエリアや商品と馴染むインテリアが置かれ家で寛いでいる様子を連想させるエリアなど、アートとアットホームさを兼ね合わせた空間は訪れた人が自由に楽しめる場になっている。香りと空間で独自の世界観を演出し、2021年度の売り上げは1.43億元(28億円)にもなった。中国香水業界に新しい風を吹かせた「观夏to summer」が今後も注目されている。
香りで自己表現をする若者が増加
中国の香水市場は今後も右肩上がり
中国における香水市場は、海外の大手ハイブランドが7割のシェアを占め独占状態になり、中国産ブランドは少数であった。また、コロナ禍によってマスク着用が半強制的になったことから口紅の代わりに香りで自己表現をする若者が増加し、人々の不安感情の高まりからヒーリング効果を求める消費者が増加していた。このような現状を受け、「观夏to summer」は東洋文化に基づき高級感と気品が漂う中国らしい香りを開発し、“香りの差別化”を図って出店を行った。加えてオンライン販売が盛んな中国で敢えて大々的な広告は出さず、オフライン店舗での空間演出に拘った。“目で観て香りを通して現代のオリエンタルな美を感じてもらう”をコンセプトの通り、五感を使った体験を通して消費者の心を掴むことに成功。リピート率は60%にもなっている。また、中国の香水市場は右肩上がりで2022年度は前年から24%成長し、2025年には市場規模300億元(6000億円)に達すると予測されている。ポテンシャルを秘めた中国香水市場は国内外から注目される分野と考えられる。