アセアン各国のなかでもトップクラスの経済成長率を誇るフィリピン。海外で働くフィリピン人労働者(OFW)の仕送りに支えられ、個人消費が景気拡大を推し進めている。2016年には大統領選が控えており、安定した政治体制が続くか、海外投資家からも熱い視線が注がれている、フィリピンのトレンドランキングをお届けします。
ハレの日に家族と楽しむプレミアムブッフェ&トンカツ |
以前からホテルなどのブッフェはあったが、2,000ペソ(5,000円)と価格が高いため日常的に行くことは一般的ではなかった。しかし、2014年頃からショッピングモール内にプレミアムブッフェレストランが次々にオープン。前菜、サラダ、中華、イタリアン、日本食、ビーフやチキン、ラム肉をその場でシェフが切り分けるサービスとリーズナブルな価格が人気の要因だ。デザートも各種ケーキからその場で焼いてもらったクレープ生地を使い、オリジナルのパフェを作れるなど、エンターテインメント好きなフィリピン人向けの趣向となっている。
また、数年前から日本のトンカツに魅せられたフィリピンフード産業のビジネスマンがYABUというトンカツ屋をオープンし大ヒット、その流れに乗ろうとサボテン、キムかつ、銀座梅林、まい泉と続々とトンカツ屋がオープンし、こちらもハレの日の食事として定着をしている。
トレンドの背景
ホテルのブッフェは2,000ペソ(5,000円)だが、モールにある食べ放題は700ペソ(1,900円)くらいからあり、一般的なフィリピン人でも少し背伸びをすれば手が届く価格となっている。誕生月半額、お年寄りは歳の数の%を割り引いてくれるサービスなどがあるため、家族で毎週食事をすることが習慣のフィリピン人には受けている。親族が多いフィリピンでは、毎月のように親戚で誕生日の人がいるため、イベントとして家族でブッフェに行くことがブームとなっている。
また、トンカツも同様にハレの日の食事として急速に浸透している。豚肉がもともとポピュラーな食材であることや、揚げ物は一般的な調理法、肉やご飯にソースをつけてたべるフィリピンの食文化にフィットした。また、タイミングよくフィリピン人の訪日観光ビザが規制緩和され、LCCが関西、成田に就航し日本が身近になり、本場の日本食を食べた経験を持つフィリピン人が増えたことからトンカツブームに火がついた。
行政主導の強制的なエコ活動からエコバックが浸透 |
エコバッグの利用は世界的にも広まっているが、マニラの首都圏マカティでは、スーパーで買い物の際ビニール袋の使用が行政主導で禁止になった。茶色い紙袋に入れてもらうか、エコバッグを持参して商品を持ち帰ることになる。エコバッグを忘れた買い物客はレジで購入出来るが、ほとんどの人は購入せず、紙袋に入れている。スターバックスコーヒーを含む多くの飲食店でもストローを紙製にすることになったが、暑いフィリピンでは冷たい飲み物を飲む人も多く、濡れると使い物にならなくなるという声も聞こえる。
トレンドの背景
台風の影響でたびたび川が氾濫して洪水が起こるフィリピンで河川にゴミがつまらないよう、積極的に脱ビニール袋の運動が始まった。買い物は自分でエコバックを持っていく人も増え、どこのスーパーでもエコバックが30ペソ(約80円)程度と、現地の感覚でも気軽に買える額となっている。
行政主導のこうした規制は強引な手法であり、賛否両論であるが、強制的に生活者に環境意識を持たせるきっかけとなっている。
アメリカから逆輸入のココナッツオイルブーム到来 |
今まで匂いが独特で、さほど注目をされていなかったココナッツオイルが今年ブレイクした。フィリピンは普通の家にもココナッツの木があり、そこでとれたココナッツミルクやジュースは料理にも使っていたが、このアメリカから始まった世界的ココナッツオイルブームで、そのまま摂取するだけでなくココナッツを使ったお菓子やマヨネーズも国際食品市で見かけるようになるなど、様々な用途に使用されている。食べるだけでなくお肌にも優しいとの事で石けん、シャンプー、虫除けスプレーなどスキンケアでもココナッツ人気はまだまだ続きそうだ。
トレンドの背景
背景には、公用語の英語を使用することで、海外の情報を得られることが挙げられる。アメリカでココナッツブームが起こってからまもなくフィリピンにも紹介された。
健康志向の人は豆乳などを使ったバナナスムージーにココナッツオイルを入れる他、コーヒーにも入れるようになった。
ヒューマンハードネイチャーというブランドはブームの前から肌に優しい、地球に優しいをテーマにココナッツのスキンケア商品から、最近ではシャンプー、洗剤、虫除けスプレーなども作っているココナッツ製品の先駆けの企業。このブームに乗って老舗のココナッツパイのショップも毎日多くの客が押しかけ材料調達が間に合わないという。
店頭から姿を消すほど人気となった「ヤクルトライト」 |
フィリピンで2015年6月より売り出されたヤクルトライト。通常のヤクルトよりも25%カロリーが低く、健康志向の人には嬉しいニュースであった。水や気候の違いで、お腹を壊す人が多いが、外国人でもヤクルトを毎日一本続けている人は下痢になりにくいという話はフィリピンでよく聞く話である。
フィリピンではヤクルトが日常的に親しまれており、コンビニでも一本単位で買う事が出来る。そうした中発売された今回のヤクルトライトは、カロリーオフの商品ということで、ヤクルトを日常的に飲んでいる人達が飛びつき、人気に火が付いた。一時期は店頭から姿を消すほどの2015年を代表するヒット商品となった。
トレンドの背景
年々高まる健康志向が、ヤクルトライトのヒットの背景にある。通常のヤクルトが40ペソ(5本セット)に対して、ヤクルトライトは50ペソと割高であり、購入するのは金銭的に余裕のある、ミドルアッパー層以上となっている。
実際に中間層が主に利用するスーパーマーケット(ピュアゴールド、オールディ)にいくとヤクルトライト自体の取り扱いがない場合もある。
深刻化するマニラの渋滞事情、交通アプリに人気集中 |
毎日渋滞の話題で盛り上がり、新聞の見出しにもなるマニラの劣悪な交通事情。2015年に入ってからはスマホの交通アプリが一般的に利用されるようになった。最もポピュラーになったのは渋滞情報や口コミが確認できる「waze」(アジア各国で支持されており、日本でも展開)。また配車アプリの「Grab taxi」、「Urber」も浸透した。
こうした状況を受け、政府は対応策として学校を週休3日にし、外出を少なくすることで渋滞を緩和することや、多くの人がバス通勤できるように2階建てバスの運行を提案したが、結果として週休3日案は却下された。
トレンドの背景
フィリピンは毎月給料日が15日と30日の2回あり、給料日と金曜日が重なり雨が降る場合は、大渋滞となる。近年中間層でも車を購入する人が増えてきたため、車両が増えすぎて渋滞は悪化の一途を辿っている。
車両登録台数の拡大を見越した道路インフラの整備がなく、コンドミニアム建設ラッシュによって、一地域に住民が増えすぎ、渋滞も深刻化している。電車は事故が多発するなど、公共交通機関の質の低さも車を所有する人が増える要因となっている。
■家族とのコミュニケーションの場に求められる商品&サービス
大家族が多く、誕生日や記念日を大人数で祝うことから、No1にランクインしたブッフェやトンカツの業態が支持されている。ファストフード店のジョリビーは低価格と、ファミリー向けのメニュー、そしてファミリー層へのサービスや、パーティ利用を積極的に進め、今では国民食ともなっている。今後、中間層が消費を拡大していくには、よりソフィスティケートされた家族向けサービスや、今までにない新しい商品が求められる。
■今後ますます広がる健康ブーム、時差なく米国情報にアクセス
タイやシンガポールでもココナッツは今年注目の健康アイテムとなったが、米国志向の強いフィリピンでは、公用語の英語で米国の情報をリアルタイムにアクセスできるため、早い段階でココナッツオイルブームに火がついた。米国セレブの健康法をチェックして、SNSで発信している健康&セレブマニアような個人の健康&セレブマニアなども存在し、ブームは瞬く間に広がっていく。
■ようやく日本に目が向き始めた今、求められる「本物の日本」
2014年から段階的に始まっている短期訪日滞在時のビザ緩和により、2015年は多くのフィリピン人が日本に訪れた。日本食の味や、日本のコンテンツに触れたフィリピン人は本格的な日本食や、牛丼など日本のファストフード(丸亀製麺は進出を予定)、日本のマンガ・アニメ、アイドル、美容商品など、タイに見られるような「本物の日本」を市場として求めていくと考えられる。
TNCアジアトレンドラボでは、こうした動きを2016年も引き続きウォッチしてまいります。他国のトレンドランキングの更新もどうぞお楽しみに。
■調査概要調査方法:TNCアジアトレンドラボ、現地ボードメンバーを中心としたグループインタビュー、およびライフスタイル・リサーチャーによる定性調査 調査時期:2015年11月 調査対象者:マニラに5年以上居住する男女、かつアッパーミドル以上の生活者、10代後半~20代前半の、トレンドに敏感な層 調査実施機関:株式会社TNC(http://www.tenace.co.jp/)および海外協力会社 ■株式会社TNC 各国の高感度層で構成される現地ボードメンバーと共にグループインタビューやリサーチを定期的に行い、ウェブサイトで情報発信や分析を行う『TNCアジアトレンドラボ』を2015年8月よりサービス開始。また70カ国100地域在住500人の日本人女性ネットワーク『ライフスタイル・リサーチャー』を主軸とした海外リサーチ、マーケティング、PR業務を行う会社です。現地に精通した日本人女性が、その国に長く暮らさないとわからない文化や、数字に潜む意味をひもとき、日本人が未だ知らない斬新なモノやコトを探すインバウンズ、日本企業が進出する際のベースとなるリサーチ・アウトバウンズや、現地の人たちの暮らしぶりや生活習慣のレポートから、海外におけるヒント探し、市場レポートなど幅広く対応します。また、レポートに基づいた視察のアテンドも行っております。 ■問い合わせ先 株式会社TNC TNCアジアトレンドラボ編集部 木下・濱野 TEL:03-6280-7193 FAX:03-6280-7194 お問い合わせフォーム:https://www.tnc-trend.jp/about/#contact |