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2016年アセアン・トレンドランキング ~ベトナム編~

ベトナム
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昨年に引き続き、TNCアジアトレンドラボではアセアン経済の中心を担う、インドネシア・シンガポール・タイ・フィリピン・ベトナム・マレーシアの6ヵ国において、2016年のトレンド調査を行いました。まず最初に紹介するのは、 5年ぶりの党大会が開催され、政府の体制も刷新し、変化の年となったベトナム。数年前から堅調に経済成長が続き、10年後には人口1億人に到達するという予測も発表され、アセアン内でも存在感を高めています。ホーチミンやハノイだけでなく、ダナンやニャチャンなど、近年は人気観光地として地方都市も世界中から注目されている、ベトナムの2016年のトレンドランキングをお届けします。

 

 

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既存のバイクタクシーの問題を解決し、爆発的に浸透する「Grab Taxi」

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世界中で増加している配車アプリだが、ベトナムでも2014年にマレーシア発の「Grab」とアメリカ発の「Uber」の配信がスタートした。タクシーに関しては両社のシェアは拮抗しているが、Grabが2014年末にリリースしたバイクタクシー配車アプリ「Grab Bike」が2016年、急速に利用者数を伸ばし、既存のバイクタクシーである「Xe om(セオム)」をも圧倒している。Grab Taxiとは異なり、Grab Bikeは運転手にGrabとひと目で分かるグリーンのジャケットとヘルメットを着させることによって、PR効果も生んでいる。街中で信号待ちをしていると、4~5台は目に入るほどドライバーの数も増加している。Grab Bikeは乗車前に価格が決まっているため値段交渉の必要がなく、1km当たりおよそ5,000ドン(約25円)と、従来のタクシーの3分の1程度と安い(時間帯や混雑状況によって多少相場は変動する)。また、運転手には若者が多く、片言でも英語が通じるため外国人利用者にも好評。最近では、後ろに大きなクマのぬいぐるみを乗せて街中を走らせるというプロモーションも行うなど、認知度を高めている。

トレンドの背景

ベトナムのバイク保有率は世帯で86%(2014年・米シンクタンク・Pew Research Center調べ)と世界44ヵ国・地域中でタイに次ぎ2位の、世界でもトップクラスのバイク利用国。一方で、学生や妊婦などバイクを持たない人、乗れない人もおり、「Xe om」と呼ばれるバイクタクシーには一定の需要があった。しかし、運転手の中には決して衛生的とは言えない身なり、値段交渉によるトラブル、外国人旅行者にとっては英語が通じないなど、問題も少なくなかった。そこに登場したGrab Bikeによるサービスは、これまでバイクタクシーが抱えていた問題を解決し、「バイクはあるがお金はない」という学生を中心とした若者の雇用も創出し、爆発的に普及。価格設定が安く、混雑時などのなかなかつかまらない際にはチップを追加することができるなど、現地の商習慣に合ったローカライズも進んでいる。

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屋台文化から毎年続々生まれるトレンド・ストリートフード

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毎年、新たなストリートフードが誕生するベトナムで、2016年に話題となったストリートフードをピックアップ。「Banh Mi Nuong(バインミー・ヌン/焼きバインミー)」は、定番の朝食であるフランスパンを短冊状に切り分け、肉でんぶ、油で炒めた万能ねぎ、チリソースとマヨネーズをかけた一品。「たこ焼き」は2014年頃から屋台を数軒見かける程度であったが、2016年に入って爆発的に流行。日本のたこ焼きとの違いはチリソースをかける程度で、多くの屋台では日本でよく見られるたこ焼きと同様のものを提供している。「シェイクマンゴー」は、ベトナムにもともとあった、まだ熟していない青いマンゴーに塩をつけて食べるというものを簡易化させた一品。筒状のカップにマンゴーと調味料を入れ、シェイクすれば完成するスナックメニュー。今では、揚げたサツマイモを粉チーズなどといっしょにシェイクする派生商品も生まれている。いずれも10,000ドン~20,000ドン(約50~100円)で提供されることが多い。

トレンドの背景

ベトナムでは1世紀以上前から路上にフォーやバインミーを提供する屋台が並んでおり、屋台文化から新たな食べ物が誕生している。たこ焼きは年々増える日本食レストランによる日本食の浸透と、もともと米粉を多用した粉もの文化がベトナムにあった点から、すんなりと受け入れられた。焼きバインミーとシェイクマンゴーは、以前からあったメニューをアレンジしたもので、外国料理からだけでなく、自国の料理からトレンドが生まれるようにもなってきている。また、週末に行われるウィークエンドマーケットでも必ず屋台が展開されており、そこに集う若者からトレンドになる傾向にある。ウィークエンドマーケットでも巻き寿司を油で揚げたものが話題となるなど、新たなフードトレンドが生まれている。

ベトナム人によるベトナム人のための新WEBサービス&コンテンツ

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ベトナムにおいて、SNSはFacebookが最大のシェアを誇っているが、二番手としてVNGが運営する「Zing me」が、またLINEと似たメッセージアプリとして「Zalo」が浸透している。特にZaloは、日系のViberやLINE、韓国系のKakao Talk、中国系のWeChatと比べて、ユーザー数が4,500万と、ベトナムの人口の半数近くが利用しており、ほぼ独壇場である。この他、ベトナム人によって開発されたウェブサービスには、Forbes誌でも取り上げられた発音に焦点を当てた英語練習アプリ「Elsa」や、世界のアプリランキングでも1位になったゲーム「Flappy Bird」、配車アプリの「Vrada」などがある。2016年の後半にはベトナムで「muvik」という動画プラットフォームが急速にユーザー数を伸ばしており、流行に敏感な若者たちがヒット曲に合わせた口パク動画を投稿するなど、若者文化を生み出す土壌になりつつある。また、歌手のSon Tung(ソン・トゥン)氏が発した(あるタレントを真似て顔にフェイク・タトゥーを入れたことをインタビュアーから指摘されたことに対して)「好きだから●●しただけ!」という返答が、相手を小馬鹿にするニュアンスの言葉として大ヒットし、テレビでの出来事がインターネットを通じて流行語になるなどの動きも見せている。

トレンドの背景

ベトナム政府は2005年のIT立国化の宣言から着々と準備を進めており、国策として主要都市の国立大学でITエンジニアの育成を強化。また、外資系企業であってもIT分野は一部課税を免除するなどの優遇措置を取っている。そうした背景により、ここ数年で日系のITオフショア企業が急激に伸びているが、同時に国内市場向けのスタートアップを目指す若者も増えつつある。オフショア企業での業務の多くはベトナム国外で提供されるサービスを開発ことが多いため、エンドユーザーはエンジニア自身とはまるで違う環境にあることも少なくない。しかし、ベトナムでは近年、ベトナム人であることや自身のアイデンティティを重視する傾向もあり、ベトナム人のベトナム人によるベトナム人のためのITサービスが続々と誕生してきている。

破格の当選金に国民が熱狂・ベトナム版「ロト6」がスタート

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2016年7月に他の都市に先駆けてホーチミン市でスタートした、コンピュータ宝くじ会社「Vietlott(ベトロト)」によるベトナム版ロト6「Mega 6」。1枚当たり10,000ドン(約50円)であるが、当選者が出なかった場合にはキャリーオーバーとなるため、時には日本円で数億という大金を手に入れることが可能。すでに10月と11月、立て続けに2名の当選者を出しており、どちらも3億円を超える大金(現地の平均年収の約1,000倍)ということもあり、Mega6の購入者数が爆発的に伸びた。過去に出た数字の出現回数の統計が見られる攻略サイトも登場している。一方で問題も起こっており、1人目の当選者が「400世帯の貧困層にプレゼントを贈る」と発言したことで、自宅に大勢の人々が押しかけて、地元警察が治安維持に当たるという事態が発生している。また、国内では違法となる市や省を越えた宝くじの転売行為も見られ、販売する地方自治体にとっては、歳入に不利益になると、既存の宝くじを販売する会社から抗議が起こっている。

トレンドの背景

ベトナムでは街中の至る場所に宝くじ売りがおり、壁のないオープンテラスの飲食店で食事をしていると、宝くじ売りが店内に入り、食事中の客の前まで来て宝くじを差し出してくる。彼らの一部はベトナム戦争などを背景として障害を負った人や貧困層の子どもなどであったりするため、社会貢献の意味も含めて彼らから宝くじを購入する人は多い。そのため、もともと宝くじが身近にある環境ではあったが、今回のMega6は、財政省傘下の会社によって行われており、政府に対して汚職のイメージを持つ人も少なくないため、当初は本当に当選者が出るのか疑問視する声があった。しかし、実際に当選者の発表や関連する出来事(自宅への押しかけ)が知られ、本当に大金が手に入る証明になり、一気に人気に火が付いた。

高島屋の進出など日系流通企業の動きが活発に

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2016年7月30日、ホーチミン高島屋がオープン。既存のデパートに比べてブランド店や高級レストランなどのテナントが多く入居しており、館内には流行に敏感な女性や、身なりの良い家族など、富裕層・アッパークラス層を中心に支持されている。2014年1月に1号店をオープンしたAEONも着々と店舗を増やしており、2016年7月には国内4号店となるAEON MALL Binh Tan(イオンモール・ビンタン)をオープン。ホーチミン市とハノイ市で展開する一方で、日本の東急グループと地場企業のBecamex(べカメックス)の合併会社「べカメックス東急」が都市開発を進めるビンズン省にも展開するなど、順調にベトナム各地への展開を進めている。2010年に進出したファミリーマートも順調に店舗を増やしており、現地でライセンスエージェンシーとのコラボレーションによる「ドラえもん中華まん」シリーズが好評。そのほか、バインミーやソイ(おこわ)など、ローカライズメニューを着々と増やしている。価格はいずれも10,000~20,000ドン(約50~100円)前後。次いで日本国内コンビニ業界最大手のセブンイレブンも2017年のベトナム進出を発表。ホーチミン市内有数の観光地・ベンタイン市場にも近い交差点では、うどんの丸亀製麺、串カツ屋のまんまる、そしてシンガポール系の日本食店と、ベトナム国内への日系企業の進出が盛り上がりを見せている。

トレンドの背景

2011年までは日本食レストランといえば、在住邦人による個人経営が一般的で、寿司、ラーメン、お好み焼きなど、日本食全般を取り揃えた飲食店が多かった。しかし、日本に行ったことのあるベトナム人や中間層が増え、現在は細分化された料理を出す専門店が求められるようになってきている。特にAEONの進出を皮切りに、日本でも展開する有名チェーン店や、高島屋など日系企業が続々と進出。その要因のひとつとして、中国に次いで2位でもある、ベトナムから日本への研修生や留学生の増加も考えられる。現地での日本語人材が増え、経営層や、また客の日本人とコミュニケーションが円滑に取れる人材がいるというのは大きい。現在、政府主導により一部の小学校で試験的に日本語を第一外国語に採用するなど、ベトナムと日本が今後も関係を深めていくことが予想される。

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■伝統食のモダンアレンジ&海外食を取り入れて

 進化するストリートフード

これまでは日本・韓国・アメリカなどのトレンドを取り入れる一方であったが、焼きバインミーやシェイクマンゴーなど、もともとベトナムにあったものに再び焦点を当て、現代風にアレンジする流れが生まれてきている。また、ストリートフードとしてたこ焼きや、在住欧米人ホットドッグを提供する屋台が出てくるなど、ストリートフードはますます多様化していくことが予想される。

■オフショアから独立したエンジニアの増加で

 国産WEBサービスが充実

IT分野では人件費や物価の高騰が進むことが予想されるため、オフショアの形態の利益は縮小が進み、外資のオフショア企業で働いていたエンジニアの独立が進んでいくと考えられる。オフショア事業からベトナム国内市場に目を向けた事業の転換は事業継続の上で必要となり、国産のWEBサービスも充実していきそうだ。

■新サービスの浸透で訪れる変化に

 注目が集まる2017年

Grabの普及は既存のバイクタクシーの需要を下げることになり、これまでバイクタクシーの運転手として働いていた人々はGrabのドライバーになるか、職を失ってしまうような状況も訪れるだろう。そのため、行政機関などが彼らに対して職業訓練などのサポートを行わない限り、衝突や問題が起こりかねない。新たなサービスが浸透する中で、今後どのような変化が訪れるか、2017年の動向に注目したい。

 

TNCアジアトレンドラボでは、こうした動きを2017年も引き続きウォッチしてまいります。他国のトレンドランキングの更新もどうぞお楽しみに。

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■調査概要調査方法:TNCアジアトレンドラボ、現地ボードメンバーを中心としたグループインタビュー、およびライフスタイル・リサーチャーによる定性調査

調査時期:2016年11月

調査対象者:ホーチミンに5年以上居住する男女、かつアッパーミドル以上の生活者、10代後半~20代前半の、トレンドに敏感な層

調査実施機関:株式会社TNC(http://www.tenace.co.jp/)および海外協力会社


■株式会社TNC

各国の高感度層で構成される現地ボードメンバーと共にグループインタビューやリサーチを定期的に行い、ウェブサイトで情報発信や分析を行う『TNCアジアトレンドラボ』を2015年8月よりサービス開始。また70カ国100地域在住500人の日本人女性ネットワーク『ライフスタイル・リサーチャー』を主軸とした海外リサーチ、マーケティング、PR業務を行う会社です。現地に精通した日本人女性が、その国に長く暮らさないとわからない文化や、数字に潜む意味をひもとき、日本人が未だ知らない斬新なモノやコトを探すインバウンズ、日本企業が進出する際のベースとなるリサーチ・アウトバウンズや、現地の人たちの暮らしぶりや生活習慣のレポートから、海外におけるヒント探し、市場レポートなど幅広く対応します。また、レポートに基づいた視察のアテンドも行っております。


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株式会社TNC TNCアジアトレンドラボ編集部 木下・濱野

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