2億人以上の人口を抱え、消費市場として魅力的なインドネシア。2017年はインフラの整備が着々と進められ、ジャカルタ~チカラン間で通勤電車の新路線が運行開始される他、2019年5月開業のインドネシア高速鉄道計画などもあり、渋滞解消に向けてさまざまなプロジェクトが展開されています。スタートアップ向けのコワーキングスペース、アニメやゲームなどのコンテンツを学ぶ拠点ともなる「デジタル・ハブ」も整備が進み、デジタル産業の発展も見込まれるインドネシアのランキングです。
渋滞を回避して気軽に買い物・ECサイトが大盛況 |
2016年はバイクタクシーアプリ「GOJEK」経由の宅配サービスが都市部では必要不可欠となったが、2017年はECサイトが盛況だ。シンガポールの巨大インターネット企業「Sea(旧称:Garena)」が運営するECサイト「Shopee」は、道路脇の看板やオフィスビルのエレベーター内のビデオ広告、バイクタクシーの座席部分への広告設置など大々的に宣伝を行った。東南アジア最大級のECサイト「LAZADA」は、東南アジアでダウンロード累計数5,000万以上を誇る人気アプリで、2017年、インドネシアにて、「Marketeers 2017」による「Best WOW Brand for E-Commerce」を受賞。その他、「Tokopedia」、「Bukalapak」、「Blibli」、「Sale Stock」などインドネシアのスタートアップ企業によるサービスが続々と登場した。スマホのプリペイド機能での支払い、分割払い、クレジットカード、コンビニでの支払いも可能だ。国内商品だけでなく、海外からの商品も購入できる。
トレンドの背景
渋滞が年々悪化するジャカルタ近郊では渋滞に巻き込まれることなく、いかに快適に過ごすことかが重視されている。オンラインショッピングは、渋滞を気にせずモールに行かずとも、個人から企業まで数ある出品者の商品の価格や質を比較して購入できる。商品の詳細はチャット機能で直接出品者に確認可能。買い手は外出することなく商品を購入でき、売り手は販売する場所(実店舗)を設けることなくビジネスを始められるため、オンラインショッピングは瞬く間に広まった。また、人気のECサイトは、ATMや近隣のコンビニでの支払いが可能で、クレジットカードを所持しない若者でも購入が可能。2017年はハンドスピナーや韓国コスメなどがトレンドに敏感な若者を中心に人気が出た。
プリペイドカード「e-money」が浸透 |
電子マネー、通称「e-money」がインドネシア国内の銀行「Mandiri」、「BCA」、「BNI」などから発行されている。これまであまり普及していなかったが、普及を図るジョコウィ大統領の方針により、2017年10月31日から高速料金などはe-moneyの支払いのみで、現金での支払いができなくなった。プリペイドカード自体の価格は20,000ルピア(約170円)で、ATM、コンビニ、モール、TransJakarta(公共バス)の駅窓口などでカードに入金して使用する。高速料金以外には電車、公共バス、駐車場、コンビニ、一部のレストラン&ファストフード店などの支払いにも使用できる。最近、自動販売機などにも対応してきている。
トレンドの背景
以前は「Indomaret」などコンビニが発行するプリペイドカードが高速料金の支払いに使用できたが、「e-money」への移行によって、銀行発行のプリペイドカードのみの使用になった。銀行は利用者がプリペイドカードへ入金をするごとに手数料2,500ルピア(約21円)を受け取る。アプリからの入金も可能。高速道路の料金所での支払い時間も渋滞の原因となっていたため、「e-money」の普及によって、渋滞の緩和を図っている。
現代風にアレンジされたミルクコーヒー「コピスス」 |
2016年、スタイリッシュで個性的なカフェ、本格志向のサードウェーブコーヒーを提供するカフェが増加。ブラックコーヒーやカプチーノなどの甘くないコーヒーが流行した。もともと甘いコーヒーや甘い物を好む人が多いインドネシア人。甘くないコーヒーを無理して飲んでいる人も少なくなかった。そのような状況の中、2017年はインドネシアのローカルコーヒー「コピスス」に改めて注目が集まった。コピススはコンデンスミルクと砂糖が入った甘いミルクコーヒーで、通常の砂糖ではなく黒砂糖やココナッツシュガーなどで甘さをプラスしたコピススを提供するカフェ「TUKU」が人気となった。同店にはジョコウィ大統領も訪れたことでニュースにもなり、店舗も次々に増えた。GOJEK経由の注文が多く、ドライバーが店の前に並んでいる光景をよく目にする。
トレンドの背景
インドネシアで以前から親しまれてきた「コピスス」が現代風にアレンジされて登場し、人気となった。インスタントコーヒーで淹れるのではなく、コーヒーにもこだわり、インドネシア産のコーヒーを使用し、黒砂糖やココナッツシュガーで甘さを加えている点も支持されている。価格も20,000ルピア(約160円)前後と高くないため、気軽に飲むことができる。カフェで飲むのではなく、友達の家に集まってGOJEKでコピススを注文し、おやつと一緒に楽しむスタイルがトレンドとなった。
環境に配慮したモビリティ「エコバジャイ」&「電動自転車」 |
インドネシア国民の足でもある3輪バイク「バジャイ」が進化を遂げている。2017年に排気ガスを輩出するガソリンを燃料とするオレンジ色のバジャイが廃止となり、圧縮天然ガスで走る青色のバジャイのみの運行となった。さらに環境に優しい低燃費の車型の4輪バジャイが試験的に登場し話題になった。また、バイクの販売台数が年間700万台に上るインドネシアで、電動自転車がパーソナルモビリティとして注目されている。人気の車種は「Earth Platinum」。500万ルピア(約42,000円)前後と価格も安く、燃料費もかからない電動自転車はバイクに似た見た目だが免許は必要がなく、近所に買い物に行く際など、短距離移動の際の交通手段として浸透してきている。
トレンドの背景
1970年代に登場したオレンジ色のバジャイは排気ガスと走行の際の騒音が問題となっており、解消に向けて環境に配慮した青色のバジャイが登場。オレンジ色のバジャイが1台1,200万ルピア(約10万円)に対し、青色のバジャイは3,500万ルピア(約29万円)と高額で、全車両の移行には時間を要した。また、電動自転車は通常のバイクに比べ、半額以下で購入可能。国内最大級の国際Expo「ジャカルタフェア」で発表されて話題となり、主婦を中心に新たな交通手段として人気となっている。
チーズタルト販売店が続々進出 |
2016年11月に日本のチーズタルト店「Pablo」がジャカルタにオープンし、数時間待ちの行列になるほど人気となった。このブームを受けて日本の 「Hokkaido Baby」や「Uncle Tetsu」、香港の「Cheesess」などのチーズタルト店の出店が相次いだ。また専門店以外の「J.TART」や「BreadLife」といったケーキショップやベーカリーでも類似のチーズタルトを販売するようになった。Pabloのミニサイズのタルトが35,000ルピア(約300円)、ローカルのショップは18,000ルピア(約150円)前後と半額近く安い価格で提供している。GOJEKのドライバーが注文を受けて行列に並んでいる光景もよく目にする。
トレンドの背景
インドネシアの伝統菓子「マルタバック」や定番の土産でもある「ブラウニー」など、たっぷりのチーズを使用した食べ物が以前からあり、チーズテイストのメニューは好まれる傾向にある。Pabloのチーズタルトは、口の中でとろける感覚がこれまでになかったと、2016年から2017年にかけて大人気となった。また、その場で調理された焼き立てのタルトが購入できるという点も支持されている。訪日旅行客が増え、日本で体験した味をインドネシアでも気軽に味わえるということで訪日旅行経験者を惹きつけた。他の東南アジア諸国でもPabloのチーズタルトは人気となったが、店舗から遠いエリアに住む人がGOJEK経由で注文し、ドライバーが行列に並び購入、さらにドライバーの間でも人気となった点がインドネシアらしい。
■GOJEKの浸透でオンラインショッピングが盛況
インドネシアのEC市場規模は年々増加しており、2018年には市場規模が100憶ドルを超すと予想されている(※statista.com)。「LAZADA」、「BliBli」、「ZALORA」、「Tokopedia」などさまざまなECサイトが浸透している。交通渋滞が深刻な社会問題でもあるジャカルタでは「GOJEK」の登場により、商品の配達から受け取りがスムーズとなったこともEC市場の規模拡大の要因。地域によってはまだサービスを受けられないところもあるが、インフラ整備によって、さらなる普及と利便性の向上が見込まれる。
■渋滞解消のための施策&エコモビリティ
渋滞解消に向けて、インドネシア政府は2017年より高速道路料金の支払いを電子マネーに統一。料金の支払いの手間が渋滞の要因のひとつとなっていたが、スムーズな支払いにより渋滞緩和を図っている。公共交通機関だけでなく、パーソナルモビリティにも変化が生まれており、バイクの代わりとして電動自転車が浸透しつつある。
■カフェ&スイーツから生まれる食トレンド
イスラム教徒が多いインドネシアでは、アルコールではなくコーヒーやお茶と甘い物をカフェで楽しみながら仲間とコミュニケーションすることが多い。そのためカフェ、コーヒーやお茶と一緒に食べるスイーツは必要不可欠な存在。3位のコピススは本格コーヒーの反動で注目を集めたインドネシアのローカルコーヒーのモダンアレンジ。5位のチーズタルトはコーヒーやお茶請けとしても支持されている。今後もカフェやスイーツから新たなトレンドが生まれることが予想される。
TNCアジアトレンドラボでは、こうした動きを2018年も引き続きウォッチしてまいります。他国のトレンドランキングの更新もどうぞお楽しみに。
■調査概要調査方法:TNCアジアトレンドラボ、現地ボードメンバーを中心としたグループインタビュー、およびライフスタイル・リサーチャーによる定性調査 調査時期:2017年11月 調査対象者:ジャカルタに5年以上居住する男女、かつアッパーミドル以上の生活者、10代後半~20代前半の、トレンドに敏感な層 調査実施機関:株式会社TNC(http://www.tenace.co.jp/)および海外協力会社 ■株式会社TNC 各国の高感度層で構成される現地ボードメンバーと共にグループインタビューやリサーチを定期的に行い、ウェブサイトで情報発信や分析を行う『TNCアジアトレンドラボ』を2015年8月よりサービス開始。また70カ国100地域在住500人の日本人女性ネットワーク『ライフスタイル・リサーチャー』を主軸とした海外リサーチ、マーケティング、PR業務を行う会社です。現地に精通した日本人女性が、その国に長く暮らさないとわからない文化や、数字に潜む意味をひもとき、日本人が未だ知らない斬新なモノやコトを探すインバウンズ、日本企業が進出する際のベースとなるリサーチ・アウトバウンズや、現地の人たちの暮らしぶりや生活習慣のレポートから、海外におけるヒント探し、市場レポートなど幅広く対応します。また、レポートに基づいた視察のアテンドも行っております。 ■問い合わせ先 株式会社TNC TNCアジアトレンドラボ編集部 木下・濱野 TEL:03-6280-7193 FAX:03-6280-7194 お問い合わせフォーム:https://www.tnc-trend.jp/about/#contact |