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2017年アセアン・トレンドランキング ~シンガポール編~

シンガポール
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2017年9月、マレー系女性のハリマ・ヤコブ前国会議長が大統領に当選(無投票当選)。シンガポールの大統領は象徴的な存在ですが、同国で女性が大統領に就任するのは初のこと。また、「スマート・ネイション」実現への取り組みも積極的に行われています。そんなASEANの先進国家、シンガポールの2017年のトレンドランキングを紹介いたします。

 

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 第2のオーチャードへ・注目エリア「ジュロンイースト地区」

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オーチャードロードを中心とするオーチャードエリアは、百貨店、ホテル、ショッピングセンターが立ち並び、シンガポールの中心として、観光客からローカルまでが集まる当地ナンバーワンの商業エリア。長年、「シンガポールの銀座」と例えられてきた活気あるエリアだったが、2年ほど前から客足の伸びに鈍化が見られ、空きテナントの数が増えてきている。一方、西部にある郊外のジュロンイースト地区は、MRTの駅を中心に急速に発展し、伊勢丹の新店舗をはじめとする5つの大型商業施設、アウトレットモール、総合病院など新しい施設が続々と開業し注目を集めている。最近は週末のみならず平日もオーチャードエリアより集客力が高い。さらに2017年6月には、新ライブホール「ZEPP SINGAPORE」がMRTジュロンイースト駅直結の大型商業施設「BIG BOX」内にオープン。日本でライブハウスを運営するZeppホールネットワークスが手がけたもので、最大4,032人収容可能。

トレンドの背景

これまではオーチャードエリアに商業施設が集中し観光客、ローカル客ともに飽和状態となり、常に混雑していた。また、テナントの賃料も異常に高騰していたこともあり、他エリアに分散を図るため、政府主導で第2のオーチャードエリアの開発が進められてきたのがジュロンイースト地区だ。同地区にオープンした「ZEPP SINGAPORE」は、日本国内外のアーティストの海外公演の実施、ライブ活動を通じた各都市との文化交流などを目指すという。今後同エリア周辺はさらに新しい駅や公園、工業団地など、引き続き開発が進められていく予定。2026年開業予定のマレーシアとシンガポールを結ぶ高速鉄道の始発駅もこの地に計画されている。

 

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 オーストラリア発ブランドが爆発的人気

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シンガポールで店舗展開している勢いのある海外ブランドの多くがオーストラリア発のブランドである。中でも「Cotton On Group」のブランドであるレディス・メンズファッションの「COTTON ON」が国内29店舗、子ども服の「COTTON ON KIDS」9店舗、ベビー服の「COTTON ON BABY」1店舗。また、同グループのレディス・メンズカジュアルファッションの「FACTORIE」4店舗、靴店の「RUBI」16店舗、文具&雑貨の「TYPO」15店舗と、店舗展開の勢いは目を見張るものがある。どのショップもすべて大型商業施設内に出店しているのが特徴だ。同グループ以外にも、アクセサリーの「Lovisa」22店舗、文具の「Smiggle」18店舗とファストファッションを中心にアクセサリー、文具と10〜30代前半の若者層をターゲットとしたオージーブランドが大人気だ。

トレンドの背景

常夏のシンガポールには四季がなく、1年を通してファッションは夏服。簡単に洗濯ができて手入れが楽なカジュアル服が好まれる。オーストラリアも北部は温暖な気候のため、やはり冬服は必要なく、また、都市部以外はカジュアルを好む国民性。そのような共通点があり、オーストラリアのブランドが受け入れられやすい傾向にある。価格もヨーロッパ発のファストファッションに比べても安く設定されており、文具を筆頭にファッションもオーストラリアらしいカラフルな色使いが好評。注目すべき点は、そのほとんどが日本未上陸ブランドということ。今後日本でも注目を集めるかもしれない。

 

 屋台主の世代交代で進化するホーカー・フード

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シンガポールを代表する食文化「ホーカー・フード(屋台飯)」。これまでは「安い・(それなりに)美味い・早い」が必要十分条件で、チキンライスやフィッシュボールヌードル、バクテーなど昔ながらのローカルメニューが定番だった。しかし、最近は20〜30代の若い世代の屋台主が中心となり、伝統的なホーカー・フードとは違う、こだわりのメニューを提供する屋台が続々と登場。イギリス帰りのオーナーが手がけるヨークシャープディング、本格パスタなどを提供する店が現われており、価格は一般的なメニューよりは2~3割高くなるが、屋台主と同じ世代の若者を中心に支持を集めセールスは好調だ。メニューの新しさだけでなく、味や盛りつけにも工夫をし、有名レストラン顔負けのプレゼンテーションを行う屋台も少なくない。

トレンドの背景

不動産価格の高騰により、住宅だけでなく、店舗の賃料も高いシンガポール。オーナーシェフとして新しく自分のレストランをオープンしようとしても、開店資金を用意するのも大変な状況。また、人件費も高いため、ホールスタッフやシェフなどを集めるのにも資金が必要となってくる。しかし、HDBという公共住宅の敷地内にある屋台街であれば、賃料も安く抑えられ、セルフサービスでホールスタッフを雇う必要がない。そのため1人、または少人数で新規開店することが可能。若いシェフや経営者の中には、本来、レストランで出すようなメニューを屋台で提供する新しいスタイルのビジネスをスタートする人も多く、新たなホーカー・フードが生まれる原動力ともなっている。

 

  進む政府主導の計画的な公園整備

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世界的にもガーデンシティとして名高いシンガポール。近年は、単なる緑化だけでなく、目的を明確にした公園の整備が進められている。2015年7月に初のユネスコ世界遺産に認定されたシンガポール植物園(ボタニックガーデン)。これまでは市民の憩いの場や人気観光スポットとして親しまれてきたが、2017年新たに、園内に淡水湿地林から低地熱帯林を散策できる展示公園の「ラーニング・フォレスト」をオープン。シンガポールならではの自然を楽しみながら学ぶことのできる公園として国内外から注目を集めている。また、園芸植物や身の回りにある自然との関わりを通して、心身の健康回復を図る「園芸療法」も政府主導で進めており、国内各所の公園内で園芸療法ガーデンの整備も急ピッチで行われている。

トレンドの背景

海外からの融資や企業誘致を得て先進国となるべく、「シンガポールの父」と呼ばれる故リー・クアンユー元首相が建国時から積極的に都市環境が整備されながらも緑豊かでオアシスのような快適さがある「ガーデンシティ」国家をつくり上げた。近年はその緑化政策のターゲットがより明確化。国家初となるユネスコ世界遺産への認定をシンガポール植物園によって達成し、さらにその内容を日々グレードアップさせている。また、シンガポールでは、日本と同様に高齢化が社会問題となっており、都市部・住宅地内の公園を再整備し、園芸療法ガーデンの拡大を図っている。

 

 

 中等学校内にゲームセンター設置

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2017年9月にシンガポールの中等学校である「NorthLight School」内にオフィシャルオープンした「GAME HQ」。レースゲームのデイトナやエアホッケーなど人気のアーケードゲームが多数設置されており、繁華街のゲームセンターさながらの充実度だ。平日夕方5時までオープンしており、放課後に全生徒が無料で自由に利用することができる。「家に帰って1人でゲームをしたり、繁華街のゲームセンターで遊ぶより、校内で学校の仲間たちと一緒に楽しむ方が安全で、コミュニケーションも図れる」という理由で開設された。一方、カトリック系中等学校の「Maris Stella High School」では、ボードゲームを中心としたゲームルームを設置。敷地内にある系列の小学生も利用可能。教育省は、今後ニーズのある中等学校に同形態の施設設置を進めていく予定だ。

トレンドの背景

シンガポール人が通う小中高等学校はすべて教育省の直轄。大きく分けて、100%政府系学校、または、政府の援助下での私立学校の2つに分類される。どちらも政府の管轄下で運営されているため、判断の自由度に差があるものの、新しい施設の設置や指導内容などはコントロールされている。シンガポールでは小学校卒業時にPSLEと呼ばれる全国統一の卒業試験があり合格しなければ中等学に進学することができない。NorthLight SchoolはPSLE不合格だった子どもが通う学校であり、Maris Stella High Schoolは中華系カトリックの名門校である。PSLEや中等学校卒業試験など、重要な国家試験が目白押しで、生徒はかなりのストレスがあると言われている。校内ゲームセンターにはそのストレスを緩和する要素もありそうだ。

 


海外文化をいち早く取り入れる国際都市

2位のオーストラリア発のブランドが人気となった背景には気候的な要因や価格の安さだけでなく、地理的に近いこと、同じ英語圏であることも影響していそうだ。3位のホーカー・フードも海外生活を経験した若い世代の店主の台頭、外国人在住者も多く海外文化を今まで以上に受け入れ、発信していく機運が見られる。

トップダウンで進むエリア&施設の整備

ジュロンイースト地区は第2のオーチャードとするべくMRTの駅を中心に開発が進み、新たな施設も続々オープン。4位のラーニング・フォレストは観光客や子どもの情操教育に、公園は園芸療法の場として高齢者の集まる場所になり得ると考えられる。高齢化社会の到来を見据えた動きとも言えそうだ。また、中学校にゲームセンターを設置するなど、教育の場もフレキシブルに改革が進んでいる。

進むスマート・ネイション構想

国の至る所にセンサーを設置し、ビッグデータを収集することで交通状況の把握や犯罪防止、その他国民のニーズに迅速に応える体制が整いつつある。また、患者にセンサーを装着させてインターネットを通じて遠隔で診断などを行う「スマートヘルス」などのシステムの試験も開始。政府が主体となって着々とスマート・ネイションへの整備が進められており、シンガポールの動きは今後も注視する必要があるだろう。

 

TNCアジアトレンドラボでは、こうした動きを2018年も引き続きウォッチしてまいります。トレンドランキングの総括もどうぞお楽しみに。
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■調査概要調査方法:TNCアジアトレンドラボ、現地ボードメンバーを中心としたグループインタビュー、およびライフスタイル・リサーチャーによる定性調査

調査時期:2017年11月

調査対象者:シンガポールに5年以上居住する男女、かつアッパーミドル以上の生活者、10代後半~20代前半の、トレンドに敏感な層

調査実施機関:株式会社TNC(http://www.tenace.co.jp/)および海外協力会社


■株式会社TNC

各国の高感度層で構成される現地ボードメンバーと共にグループインタビューやリサーチを定期的に行い、ウェブサイトで情報発信や分析を行う『TNCアジアトレンドラボ』を2015年8月よりサービス開始。また70カ国100地域在住500人の日本人女性ネットワーク『ライフスタイル・リサーチャー』を主軸とした海外リサーチ、マーケティング、PR業務を行う会社です。現地に精通した日本人女性が、その国に長く暮らさないとわからない文化や、数字に潜む意味をひもとき、日本人が未だ知らない斬新なモノやコトを探すインバウンズ、日本企業が進出する際のベースとなるリサーチ・アウトバウンズや、現地の人たちの暮らしぶりや生活習慣のレポートから、海外におけるヒント探し、市場レポートなど幅広く対応します。また、レポートに基づいた視察のアテンドも行っております。


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株式会社TNC TNCアジアトレンドラボ編集部 木下・濱野

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