飲食テナントの食品廃棄物を再利用
食品ロス問題を学べる教育的な側面も!
マレーシア最大級のモール「1UTAMA Shopping Center(ワンウタマショッピングセンター)」では、約180の飲食テナントから1日に出る4,000kgの食品廃棄物のうち、2,600kgがモール内に設置されたリサイクル工場で有機肥料に再生されている。この肥料は1袋2リンギット(約62円)で販売され、売上は全額慈善事業に寄付されている。この「環境と持続可能性の廃棄物イノベーション(W.I.S.E=Waste Innovation for Sustainability & Environment)」と名付けられたプログラムは、2020年に開始された。飲食店には食品廃棄物専用のオレンジ色のキャスター付きゴミ箱が配られ、廃棄物は工場に持ち込む前に計量される。これにより、廃棄される具体的な量が明らかになり、飲食店は仕入れや調理の計画を見直す機会を持つことができる。
プログラムの最初の課題は工場の場所だった。発酵過程で臭気が発生するため、モール内に設置することは困難だった。解決策として、来店客も利用するトイレへの通路脇に工場を設置し、さらにガラス越しに見学が可能になるよう工夫された。通路の壁にはリサイクルに関するカラフルなインフォグラフィックが描かれ、教育的な利用もされている。小中学生の社会学習に利用されおり、保護者からは「プログラムについて学ぶことで、家庭での食べ残しも減少した」との反響も寄せられている。
食品廃棄物から肥料を作るだけでなく
屋上での太陽光発電や雨水リサイクルを実施
マレーシア人は年間830トン、1人当たり259.82kgの食品ロスを出している。現在のゴミ処理方法は主に埋め立てであり、それによって温室効果ガスの主要な原因の一つであるメタンガスが発生している。パンデミックの影響で2020年の目標達成は見送られたが、マレーシアは先進国入りを目指しており、持続可能な社会を構築することがその公約の一つとされている。そのため、食品廃棄物の削減は国の重要な課題の一つになっている。1995年に開業して以来、時代に沿った持続可能な環境を目指してきた「1UTAMA Shopping Center」では、屋上での太陽光発電やトイレの水の50%以上を雨水やリサイクル水で賄うなど、低炭素経済を意識しながらエネルギー消費を管理して運営している。これまでエネルギー、水、温室効果ガスの面で様々な施策が実施されたが、食品廃棄物が問題であった。廃棄物管理会社と協力し、肥料工場を設置することで日最大処理能力2,000kg以上の廃棄物加工機械を導入した。有機肥料は周辺の農家にも利用されており、「農場から食卓まで」を目指している。