短期滞在時のビザ免除の影響より、訪日旅行ブームが広がるタイ。日本の企業や自治体もタイ人向けのインバウンド事業に力を入れています。去る12月14日には日本製車輌やシステムが採用された高架鉄道「パープルライン」の試験運転も始まり、バンコク中心部と郊外のアクセスが向上しました。商業圏が広がり、今後さらなる発展が予想される、タイのトレンドランキングをご紹介します。
室内で植物を楽しむグリーンハウスブーム |
2015年3月にオープンしたショッピングモール・エムクオーティエは、モール内外にふんだんに緑を取り入れ、癒やしの空間を演出している。また、街中に緑を増やそうとするグリーンムーブメントの波に乗り、グリーンハウスがブームとなっており、こうした流れは住宅にも広がりを見せている。マイクロ庭園をつくり、緑のスペースを設ける他、ベランダにポットプラントを配置するなど小規模なものから、室内に緑の庭園スペースを作ってしまうような本格的なものもある。ガーデニング雑誌「バーン・レ・スワン」はグリーン好きの中で注目を集めており、毎年2回程度イベントを開催している。
トレンドの背景
バンコクの大都会にストレスを感じ、家の中で緑を身近に感じて暮らしたいと考える人が増えている。植物をアレンジし、室内のお洒落なアイテムやインテリアの一部とすることもできるため、流行に敏感なバンコクの若者に受けたと考えられる。テラリウムも流行の兆しを見せており、ワークショップが頻繁に開催されている。また、タイ人の盆栽デザイナーも現われ、植物をより身近に感じる人が増えている。
クラフトビールから伝播したローカルスピリッツ人気 |
人気のバーやバーテンダーから生まれた「Local Brew Spirits」(自家醸造酒)が人気となっている。若者の間でのビール人気の高まりから、クラフトビールが2014年頃より流行している(自家醸造によるビール造りは違法だが流行)。そこから、一般的に販売されている酒ではなく、オリジナルの酒を醸造し、提供したいと考える店が増えている。ジンなどの手軽に造れるスピリッツを中心に提供している。また、タイの伝統薬膳酒・ヤードンをカクテルなどにアレンジし、スタイリッシュに提供する店も登場した。
トレンドの背景
2003年に酒造法が改正され、小規模業者や自宅での白色スピリッツの製造が合法となった(ダークラムなど有色スピリッツは規制されている)。以降、レモングラスやパッションフルーツ、ココナッツなど、タイならではの原料を使った、オリジナルの酒造りが広まっている。バンコクで人気のバーでは、それぞれオリジナルのスピリッツやオリジナルカクテルが提供されるようになった。クラフトビールはグラス200~300バーツ(約680~1,030円)前後、ローカルスピリッツを使ったカクテルは250バーツ(約860円)前後。
バンコク各所で賑わうファーマーズマーケット |
農家が持ち寄った新鮮なオーガニック野菜の販売や、オーガニックフードを調理販売する店が集まるファーマーズマーケットが、毎週のようにバンコク各所で開催されている。食品だけでなく、アパレルやオーガニックコスメ、雑貨など、他ではあまり手に入らないアイテムが販売されている。FacebookのBangkok Farmers Marketページには、20万人超のフォロワーが存在している。
トレンドの背景
健康志向が高まっているバンコクでは、「オーガニック」や「安全な食材」、「クリーンフード」といったキーワードが重要視されるようになった。若者を中心にアメリカ発祥の「クリーンイーティング」(できるだけ自然に近い食材を選び、加工食品などは避け、身体に良い食材を摂取する)という考え方が浸透し始めている。健康志向の高まりだけではなく「自分だけのオリジナル」、「トレンドを追うのではなくトレンドセッターになりたい」と考える人が“そこにしかないもの”を求めて、ファーマーズマーケットやポップアップショップなどに好んで足を運ぶようになってきている。
セルフィー好きタイ人的、超小型カメラの楽しみ方 |
小型カメラGoProは、これまでのカメラとは異なり、防水防塵対応、スマートフォンと連動させることも可能で、若者を中心に人気となっている。FacebookのGoPro Thailand Clubには、18,000人のフォロワーが存在し、最新の情報をキャッチアップする他、自身が撮った動画をアップして楽しんでいる。また、中国のXiaomiから発売されたスポーツカメラ「Yi」は、GoProの導入モデルが6,000バーツ前後(約20,000円)であるのに対し、5,000バーツ前後(約17,000円)と安価で、より軽く、グリーンとホワイトのカラーバリエーションがあり、女性を中心に人気となっている。
トレンドの背景
他国ではスポーツやアドベンチャーシーンでの使用が一般的だが、タイではセルフィーにGoProやYiを使う人をよく見かける。タイ人は自撮り好きな人が多く、超小型で持ち運びが便利な上、しっかり背景まで入れて、かつ人に頼むよりも自分好みの構図で撮影できるため、人気が高まっている。
高齢者向け健康保険&健康診断パッケージが充実 |
高齢者向けの健康保険パッケージが人気となっており、50歳以上を対象とした商品や生涯型の保険など、各種商品が売り出されている。また、生活習慣病などの検査も受診できる高齢者向けの健康診断パッケージも人気となっており、各病院が力を入れている。バムルンラード病院では2015年10月に高齢者専用のクリニック、”New Life”を開設した。
トレンドの背景
2014年4月、タイの保健省は東南アジア諸国の中でシンガポールに次いで高齢者の数が多く、7年後には人口の5人に1人が高齢者となり、完全な高齢化社会を迎えると発表。進行する高齢化社会への流れを受け、保険会社や医療機関では、高齢者をターゲットにした商品やサービスの展開に力を入れている。中間層が増え、健康志向の高まりや、より質の高い生活を維持しようとする流れを受け、各病院や保険会社が提供する健康診断パッケージが人気となっている。
■健康志向の高まりでオーガニック需要や
高齢者ビジネスが拡大
収入の増加などにより、生活に余裕が生まれたため、オーガニックフードや、身体に良い食材を摂取するクリーンイーティングといったムーブメントが起こった。そのため、農家が持ち寄った野菜やオーガニックにこだわった製品を販売するファーマーズマーケットが活況。健康志向がますます高まっていくであろう。また、アセアン内でシンガポールに次いで高齢化が進むタイでは、No5にランクインしたサービスのような、高齢者向けサービスや保険商品の展開が今後は活発になることが予想される。
■オリジナルやカスタマイズなど、
「個性の出し方」が変化&進化
バーやバーテンダーオリジナルのローカルスピリッツやカクテルの他、ファーマーズマーケットやMade By Legacyのようなテーマ性のあるフリーマーケットなど、こだわりを持った商品やサービスを提供する場が流行に敏感なバンコクの若者の間でトレンドスポットとなった。背景には、ショッピングモールや市場で一般的に入手できるものではなく、「みんなと違うもの」を手にすることで個性を出そうという“オリジナリティ”や、自分なりに“カスタマイズ”する機運が高まっているからであると考えられる。
■都会疲れ、SNS以外のコミュニケーションを
求めるなど新たなフェーズへ
街中やショッピングモールに植物を増やすグリーンムーブメントや、身近に緑を感じるためのグリーンハウスがブームになるなど、バンコク在住者に都会疲れの傾向が見られる。また、SNSでのコミュニケーションにとらわれるのではなく、実際に人と対面してコミュニケーションできるゲームカフェの人気が高まっている。モノを手に入れて満足するという段階は過ぎ、2016年は新たなステージへと向かうタイの動向に注目が集まる。
TNCアジアトレンドラボでは、こうした動きを2016年も引き続きウォッチしてまいります。他国のトレンドランキングの更新もどうぞお楽しみに。
■調査概要調査方法:TNCアジアトレンドラボ、現地ボードメンバーを中心としたグループインタビュー、およびライフスタイル・リサーチャーによる定性調査 調査時期:2015年11月 調査対象者:バンコクに5年以上居住する男女、かつアッパーミドル以上の生活者、10代後半~20代前半の、トレンドに敏感な層 調査実施機関:株式会社TNC(http://www.tenace.co.jp/)および海外協力会社 ■株式会社TNC 各国の高感度層で構成される現地ボードメンバーと共にグループインタビューやリサーチを定期的に行い、ウェブサイトで情報発信や分析を行う『TNCアジアトレンドラボ』を2015年8月よりサービス開始。また70カ国100地域在住500人の日本人女性ネットワーク『ライフスタイル・リサーチャー』を主軸とした海外リサーチ、マーケティング、PR業務を行う会社です。現地に精通した日本人女性が、その国に長く暮らさないとわからない文化や、数字に潜む意味をひもとき、日本人が未だ知らない斬新なモノやコトを探すインバウンズ、日本企業が進出する際のベースとなるリサーチ・アウトバウンズや、現地の人たちの暮らしぶりや生活習慣のレポートから、海外におけるヒント探し、市場レポートなど幅広く対応します。また、レポートに基づいた視察のアテンドも行っております。 ■問い合わせ先 株式会社TNC TNCアジアトレンドラボ編集部 木下・濱野 TEL:03-6280-7193 FAX:03-6280-7194 お問い合わせフォーム:https://www.tnc-trend.jp/about/#contact |